// ARTICLE
業務効率化を図る方法とは?進め方4ステップと施策・ツール
// この記事を書いた人
株式会社Global Design Factory 代表取締役
高橋 遼
北海道大学工学部でAIによる自然言語処理を研究。P&Gにてビッグデータ解析・消費者分析を担当した後、伊良コーラのマーケティング責任者を経て、現在は株式会社Global Design Factory代表取締役として、中小企業を中心にAIを活用した業務効率化・自動化を支援。

「業務効率化を図るように」と指示されたものの、何から手をつければよいか分からず悩んでいませんか。ツールを導入すれば解決すると考えがちですが、実際には自社の業務を正しく可視化し、優先順位をつけて施策を選ぶという順序が欠かせません。本記事では、業務効率化の基本的な考え方から、可視化・優先順位付け・施策決定・効果検証という4つの進め方のステップ、マニュアル化や自動化といった具体的な施策、RPAや生成AIなどの役立つツール、さらに数値を伴う成功事例までを体系的に整理しました。読み終える頃には、自社がまず着手すべき施策の見極め方が分かるはずです。
業務効率化を図るとは?意味と「生産性向上」との違い
業務効率化とは何をすることか
「業務効率化を図る」とは、日々の業務プロセスに潜む非効率な部分を見つけ出し、改善することを意味します。PERSOLグループの定義によれば、業務効率化とは業務プロセスから「ムリ」「ムダ」「ムラ」を省き、非効率な業務を改善することを指します。
上司や経営層から「業務効率化を図るように」と指示を受けた場合、単に「頑張って早く終わらせる」といった精神論ではなく、業務の進め方や仕組みそのものを見直すことが求められています。具体的には、次のような問いを立てながら業務を見直していく作業だとイメージすると分かりやすくなります。
- その作業は本当に必要なのか
- 誰がやっても同じ結果になる手順になっているか
- 時間や人手のかけ方に無理・偏りはないか
こうした視点で業務を捉え直すことが、業務効率化を図る第一歩です。
「ムリ」「ムダ」「ムラ」を取り除くという考え方
業務効率化を進めるうえで基本となるのが、「ムリ」「ムダ」「ムラ」という3つの整理軸です。それぞれの意味を整理すると、次のようになります。
- ムリ:担当者の能力や持ち時間に見合わない負荷がかかっている状態です。特定の人に業務が集中し、残業や休日出勤が常態化しているようなケースが該当します。
- ムダ:本来なくても成果に影響しない作業や、価値を生まない工程が残っている状態です。形骸化した会議や、誰も見ていない報告書の作成などが例として挙げられます。
- ムラ:業務の質や進め方が担当者によってばらついている状態です。同じ業務でも人によって手順や所要時間が大きく異なる場合、そこにはムラが潜んでいる可能性があります。
この3つは互いに関連しており、一つを放置すると別の問題を引き起こすこともあります。たとえば、手順が標準化されていない(ムラ)ことが原因で、特定の人に負担が集中する(ムリ)といった連鎖です。業務効率化を図る際は、この3つの観点から自社の業務を眺め、どこにボトルネックがあるかを洗い出すことが出発点になります。
生産性向上・業務改善との違い
「業務効率化」と似た言葉に「生産性向上」「業務改善」がありますが、これらは意味合いが少しずつ異なります。混同したまま議論を進めると、施策の目的がぶれてしまうため、ここで整理しておきます。
- 業務効率化:ムリ・ムダ・ムラを取り除き、同じ成果をより少ない時間・人手・コストで生み出せるようにすることに主眼を置いた考え方です。
- 業務改善:業務効率化を含む、より広い概念です。効率化だけでなく、品質の向上やミスの削減、従業員の働きやすさの向上なども含めて業務全体を良くしていく取り組みを指します。
- 生産性向上:投入した資源(時間・人・コストなど)に対して、どれだけの成果(アウトプット)を生み出せたかという「割合」に焦点を当てた考え方です。業務効率化は、この生産性向上を実現するための具体的な手段の一つと位置づけられます。
つまり、業務効率化は業務改善という大きな枠組みの中の一施策であり、その結果として生産性向上という成果につながる、という関係性です。この違いを踏まえたうえで、次の章では業務効率化を図る背景と具体的なメリットを見ていきます。
業務効率化を図る必要性とメリット
業務効率化が求められる背景
多くの企業では、限られた人員体制の中で業務量だけが増え続けているという状況が見られます。少子高齢化にともなう労働力人口の減少や、働き方改革による労働時間の適正化への要請など、企業を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。
こうした状況下で、これまでと同じ人数・同じ時間で成果を出し続けるためには、業務プロセスに潜む「ムリ」「ムダ」「ムラ」を取り除き、限られたリソースを最大限に活かす工夫が欠かせません。特定の担当者に業務が集中する属人化や、目的が形骸化した会議・報告業務など、見直しの余地がある業務は多くの職場に存在しているのではないでしょうか。
業務効率化は、単なるコスト削減策としてではなく、変化の激しい事業環境の中で企業が持続的に成長していくための土台づくりとして、今あらためて求められている取り組みといえます。
メリット1:コストを削減できる
業務効率化に取り組む最も分かりやすいメリットが、コストの削減です。
これまで手作業で行っていた定型業務を自動化したり、無駄な工程を廃止・削減したりすることで、同じ成果を出すために必要な人員数や作業時間を減らすことができます。その結果、残業代や人件費といった直接的なコストの抑制につながるだけでなく、削減できた時間をより付加価値の高い業務に振り向けることも可能になります。
また、紙の書類やアナログな管理方法を見直し、デジタル化・ペーパーレス化を進めることで、印刷費や保管スペースにかかるコストの削減も期待できます。業務効率化によるコスト削減は、一時的な支出の抑制にとどまらず、継続的な収益体質の改善にも寄与するものです。
メリット2:生産性や品質が向上する
業務効率化は、コスト面だけでなく、生産性や品質の向上にも大きく貢献します。
無駄な工程や重複した作業を排除することで、同じ時間・人員でもより多くの成果を生み出せるようになり、組織全体の生産性が高まります。また、業務の進め方を標準化し、担当者ごとのやり方のばらつき(ムラ)をなくすことで、成果物の品質も安定しやすくなります。
さらに、属人化していた業務を可視化し、誰が担当しても一定水準の対応ができる状態を整えておくことは、担当者の急な休職や退職といったリスクへの備えとしても有効です。業務効率化によって生まれた時間的な余裕は、新しい企画の立案や顧客対応の質の向上など、より創造的で付加価値の高い業務に充てることができ、企業の競争力強化にもつながっていきます。
メリット3:従業員のモチベーションが向上する
業務効率化は、従業員の働きやすさやモチベーションにも良い影響をもたらします。
無駄な作業や非効率なプロセスに費やしていた時間や労力が減ることで、従業員は本来注力すべきコア業務に集中しやすくなります。「やらされている」と感じるような単純作業や形骸化した業務が減ることは、仕事に対する納得感や達成感を高める要因にもなります。
また、業務効率化によって残業時間が削減されれば、プライベートの時間を確保しやすくなり、ワークライフバランスの改善にもつながります。従業員一人ひとりが心身ともに健やかに働ける環境は、離職の防止や職場の定着率向上にも良い影響を与えると考えられます。コスト・生産性・モチベーションという3つのメリットは互いに関連し合っており、業務効率化への取り組みは企業と従業員の双方にとって価値のある投資といえます。
業務効率化を図るための4ステップ
業務効率化を図るといっても、思いつきで施策を導入してしまうと効果が出なかったり、かえって現場の負担が増えたりすることがあります。着実に成果を出すためには、順序立てて取り組むことが欠かせません。ここでは、業務効率化を進める際の基本となる4つのステップをご紹介します。
ステップ1:業務を可視化する
最初に取り組むべきは、現状の業務を「見える化」することです。感覚や思い込みで非効率な業務を特定しようとすると、本当に改善すべき箇所を見落としてしまう恐れがあります。
業務を可視化する際は、以下のような項目で業務の棚卸を行います。
- どのような業務が存在するか
- 誰がその業務を担当しているか
- 業務にどれくらいの人員が必要か
- 所要時間や工数はどれくらいか
こうした項目を洗い出すことで、これまで見えていなかった業務の重複や、特定の担当者に負担が集中している状況、あるいは誰も把握していなかった無駄な作業工程などが浮かび上がってきます。業務効率化を図るうえでの土台となる工程ですので、時間をかけてでも丁寧に行うことをおすすめします。
現場へのヒアリングやアンケート、日報・業務ログの確認など、複数の方法を組み合わせると、より実態に近い業務の全体像を把握しやすくなります。
ステップ2:改善箇所の優先順位を決める
業務の可視化が完了したら、次はどの業務から着手するかを決めていきます。すべての業務を一度に改善しようとすると、現場が混乱するだけでなくリソースも分散してしまうため、優先順位を明確にすることが重要です。
優先順位を決める際の軸となるのは、次の2点です。
- 現状の工数:どれくらいの時間や人員がその業務に費やされているか
- 影響範囲:その業務を改善することが、ほかの業務の効率化にもつながるかどうか
例えば、工数が大きく、かつ複数部署にまたがって発生している業務であれば、改善によるインパクトも大きくなる可能性が高いといえます。反対に、工数が小さく影響範囲も限定的な業務は、優先順位を下げて後回しにするという判断もできます。
この段階で優先順位を誤ると、労力をかけたわりに効果が薄い施策に取り組んでしまうことになりかねません。可視化で得たデータをもとに、客観的な基準で判断することを心がけましょう。
ステップ3:改善方法を決める
優先順位が定まったら、いよいよ具体的な改善方法を決定する段階です。改善方法には、不要な業務の廃止・削減、マニュアル化による業務の標準化、定型業務の自動化、アウトソーシングの活用など、さまざまな選択肢があります。それぞれの業務の性質や課題に応じて、どの手法が最適かを見極めていく必要があります。
具体的な施策の内容や選び方については、次の章で詳しく取り上げますが、このステップで意識しておきたいのは「なぜその方法を選ぶのか」という根拠を持つことです。目的が曖昧なまま施策を導入してしまうと、現場の理解を得られなかったり、想定していた効果が得られなかったりする原因になります。
ステップ4:効果検証を行う
改善方法を実行したら、それで終わりではありません。実際にどれだけの効果が得られたのかを検証するステップが不可欠です。
効果検証では、施策実施前後の工数や品質、担当者の負担感などを比較し、想定していた成果が出ているかを確認します。もし期待した効果が得られていなければ、原因を分析し、改善方法を見直す必要があります。
ここで重要なのは、一度改善したら終わりにするのではなく、可視化と分析を繰り返し行うという姿勢です。業務環境や事業状況は常に変化するため、以前は効果的だった施策が、時間の経過とともに合わなくなることもあります。ステップ1の可視化からステップ4の効果検証までを一つのサイクルとして捉え、継続的に回し続けることが、業務効率化を図るうえで成果を持続させる鍵となります。
業務効率化を図る具体的な方法・アイデア8選
業務効率化を図るための4ステップのうち、「改善方法を決める」段階では、実際にどのような施策を選ぶかが成果を左右します。ここでは、優先順位付けをした改善箇所に対して検討すべき代表的な方法を紹介します。自社の業務内容や課題に合わせて、複数の施策を組み合わせることも検討してみてください。
不要な業務を廃止・削減する
業務効率化を検討する際、まず見直すべきなのが「そもそもその業務は必要か」という視点です。長年の慣習で続けている報告業務や、過去には必要だったが現在は形骸化している会議・承認プロセスなどは、廃止・削減の候補になります。
業務を棚卸しした際に「誰も見ていない資料を作り続けている」「重複した確認作業がある」といったケースが見つかることは珍しくありません。まずは廃止できる業務がないかを洗い出し、次に頻度や量を減らせる業務がないかを検討する、という順番で見直すのが効果的です。新しいツールを導入する前に、この「引き算」の発想を持つことが、無駄なコストをかけずに効果を出す第一歩になります。
業務マニュアル・フローチャートを作成する
業務が特定の担当者に依存している「属人化」は、多くの企業が抱える課題です。担当者が不在になると業務が滞ったり、引き継ぎに時間がかかったりする原因になります。
この課題に対しては、業務の手順を可視化したマニュアルやフローチャートの作成が有効です。作業の流れ、判断基準、使用するフォーマットなどを文書化しておくことで、誰が担当しても一定の品質で業務を遂行できるようになります。また、マニュアル化は新人教育の効率化にもつながり、教える側・教わる側双方の負担軽減が期待できます。
マニュアルは一度作って終わりではなく、業務内容の変化に合わせて更新し続けることが重要です。
定型業務を自動化する
ルールが決まっており、繰り返し発生する定型業務は、自動化による効率化の効果が出やすい領域です。データ入力、請求書処理、システム間の情報転記といった業務は、人が手作業で行うと時間がかかるうえにミスも発生しやすくなります。
こうした業務は、ルールに沿って処理を自動で実行する仕組みに置き換えることで、作業時間の削減とミスの防止を同時に実現できます。ただし、判断や例外対応が多く発生する非定型的な業務には自動化が向かない場合もあるため、対象業務を見極めることが大切です。自動化を支える具体的なツールについては、次章で詳しく紹介します。
ノンコア業務をアウトソーシングする
自社のリソースを、より付加価値の高いコア業務に集中させるための方法として、ノンコア業務のアウトソーシングが挙げられます。アウトソーシングとは、社内業務の一部を外部の専門業者に委託することで、自社に不足している人材やノウハウを外部から調達する手法です。
対象となる業務は、各種事務作業や受付、コールセンター、営業支援など多岐にわたります。社内で人員を採用・育成するよりも短期間で専門性の高い業務を任せられる場合があり、生産性向上や競争力の強化につながる選択肢の一つです。自社のリソースをどの業務に振り分けるべきかを整理したうえで、委託先の候補を検討するとよいでしょう。
業務の分業・担当変更を行う
業務の効率化は、必ずしもツールの導入や外部委託だけで実現するものではありません。社内の人員配置や役割分担を見直すことも有効な手段です。
特定の担当者に業務が集中している場合は、複数人で分担できるように業務を切り分けたり、得意分野に応じて担当を入れ替えたりすることで、業務全体のスピードと品質の両方を改善できる可能性があります。また、部署をまたいで似たような業務が発生している場合は、担当を一本化することで重複作業を減らせることもあります。人員体制の見直しは、コストをかけずに着手できる施策として検討する価値があります。
改善の8原則で施策の切り口を広げる
ここまで紹介してきた施策以外にも、改善の切り口を広げるための考え方として「改善の8原則」があります。これは、業務改善を検討する際に優先すべき順序を示したもので、以下の8つの原則から構成されています。
- 廃止:その業務自体をなくせないか
- 削減:業務の頻度や量を減らせないか
- 容易化:作業をもっと簡単にできないか
- 標準化:手順やルールを統一できないか
- 計画化:段取りや進め方を事前に計画できないか
- 分業分担:複数人・複数部署で分担できないか
- 同期化:関連する作業のタイミングを揃えられないか
- 機械化:ツールやシステムに置き換えられないか
この8原則は、上位の項目ほど優先して検討すべきとされています。つまり、いきなりツール導入による「機械化」を検討するのではなく、まずは「そもそも廃止・削減できないか」から順に検討していくことで、無駄な投資を避けながら効果的な改善策を選べます。自社の課題がこの8原則のどこに当てはまるかを整理することで、これまで紹介した施策以外にも新たな改善のヒントが見つかるはずです。
業務効率化に役立つツール・システム
前章で紹介した施策の多くは、ITツールを活用することでより効果的に実行できます。ここでは、業務効率化を図るうえで代表的な4つのツールカテゴリを紹介します。それぞれ得意な用途が異なるため、自社のどの業務にどのツールが合うかを見極めることが大切です。
RPA(業務自動化ツール)
RPA(Robotic Process Automation)は、PCやクラウド上で動作するソフトウェアで、人間がパソコン上で行っている定型的な操作を自動化する仕組みです。具体的には、画面操作の自動化、ディスプレイ画面に表示された文字・図形・色の認識、別システムのアプリケーション間でのデータ受け渡し、IDやパスワードの自動入力といったデータ処理を得意としています。
前章の「機械化」や「定型業務を自動化する」の受け皿となるツールがRPAです。ルール化されていない非定型業務や、判断や問題解決を目的とした業務には適しませんが、ルールやプロセスがあらかじめ固定された定型的かつ繰り返しの作業には高い効果を発揮します。たとえば、データ入力業務やリスト作成といった単純作業、指定した法則に基づいて取得データから資料を作成したり、別の形式へアウトプットしたりする業務は、RPA導入によって大きく工数を圧縮できる領域です。
導入を検討する際は、まず「その業務は本当に定型的か」「ルールを明確に言語化できるか」を確認することがポイントです。曖昧な判断が入る業務にRPAを適用すると、かえって運用が煩雑になってしまうことがあるため注意しましょう。
生成AIツール
近年、業務効率化の選択肢として存在感を増しているのが生成AIツールです。文章作成、要約、翻訳、アイデア出し、簡単なプログラムコードの生成など、これまで人手で行っていた知的作業の一部を代替・補助することができます。
RPAが「定型的な操作の自動化」を得意とするのに対し、生成AIツールは非定型的な情報整理や文章生成といった、ある程度の柔軟性が求められる業務のサポートに向いている点が特徴です。議事録の要約、問い合わせ対応のたたき台作成、資料の骨子づくりなど、前章で紹介した「容易化」や「削減」の原則に沿った施策を後押しするツールとして活用できます。
ただし、生成AIが出力する内容には誤りが含まれる可能性があるため、最終的な確認や判断は人が行う前提で運用設計をすることが重要です。あくまで「業務の一部を補助するツール」として位置づけ、担当者の業務負荷を軽減する目的で導入を検討するとよいでしょう。
ビジネスチャット・タスク管理ツール
日々のコミュニケーションや進捗管理にかかる時間を削減するのが、ビジネスチャットやタスク管理ツールです。メールに比べて即時性が高く、やり取りの履歴も追いやすいため、部署間の連絡や確認作業にかかるムダな時間を減らすことができます。
タスク管理ツールを併用すれば、誰がどの業務をどこまで進めているかが可視化され、進捗の把握や引き継ぎがスムーズになります。これは前章で触れた「分業分担」や「同期化」の原則を実践するうえでも役立つ仕組みです。担当者が不在のときでも他のメンバーが状況を把握できるようになるため、属人化の解消にもつながります。
チャットツールは便利な反面、通知が多すぎると集中力を削ぐ原因にもなりかねません。運用ルール(返信の期限、通知設定など)をあらかじめ決めておくことで、ツール導入の効果を最大化できます。
クラウドストレージ・文書管理ツール
業務マニュアルやフローチャート、各種資料を一元管理するためには、クラウドストレージや文書管理ツールが欠かせません。前章で紹介した「業務マニュアル・フローチャートを作成する」という施策も、作成した資料が社内で適切に共有・更新されなければ効果が半減してしまいます。
クラウド上でファイルを管理すれば、場所を問わずアクセスできるうえ、複数人による同時編集や版管理も容易になります。紙やローカル端末に散在していた資料を集約することで、必要な情報を探す時間そのものを削減できる点も大きなメリットです。
これらのツールはいずれも単体で導入すれば効果が出るというものではなく、前章までで整理した「どの業務を」「どの原則で」改善するかという方針があってはじめて活きてきます。次章では、実際にこうしたツールや施策を組み合わせて成果を上げた事例を紹介します。
業務効率化を図る際の成功事例と注意点
ここまで進め方や具体的な施策、役立つツールを紹介してきましたが、実際に業務効率化に取り組んだ企業ではどのような成果が出ているのでしょうか。ここでは3つの事例を紹介しながら、業務効率化を進めるうえで押さえておきたい注意点を整理します。
事例1:属人化業務の標準化で運用体制を改善
ある大手情報通信会社の経理部では、社員数の減少に伴って業務の属人化が進み、特定の担当者しか対応できない業務が増えていることが課題となっていました。
この会社では、まず業務調査を実施して現状の業務内容を洗い出したうえで、業務マニュアルやFAQを作成し、業務の標準化を推進しました。あわせて、経理部と財務部それぞれで個別に行われていた業務を一体化し、部門をまたいだ業務運用体制を構築しています。
この事例からわかるのは、属人化という課題に対しては、いきなりツール導入に走るのではなく「業務を可視化し、マニュアル化によって標準化する」という地道なステップが有効だということです。前章で紹介した「標準化」の原則がそのまま実践された形といえます。
事例2:AI-OCR×RPAで業務工数を大幅削減
ある電子部品メーカーの総務部では、手書きの書類や帳簿を扱う業務に多くの工数がかかっていました。そこで、手書き文字を読み取ってデータ化するAI-OCRと、定型業務を自動化するRPAを組み合わせて導入し、書類の読み取りからデータ入力までの一連の業務を自動化しました。
その結果、業務の削減効果は約75〜80%と推定されており、これまで人手に頼っていた作業の多くを自動化に置き換えることに成功しています。
この事例は、前章で紹介したRPAが「ルール化された定型業務」に強みを発揮することを裏付ける好例です。手書き書類のデータ化という定型的かつ反復性の高い業務だからこそ、AI-OCRとRPAの組み合わせが大きな効果を発揮したといえるでしょう。
事例3:アウトソーシングで月間の業務工数を削減
ある人材サービス会社では、従業員に貸与する社用モバイル端末の発注や支払いといった管理業務に多くの工数がかかっていました。そこで、端末の納品・管理・解約・廃棄・請求支払いといったライフサイクル管理全体をアウトソーシングし、外部への一括委託に切り替えています。
その結果、アウトソーシング導入前と比較して約30%にあたる月320時間もの業務工数削減に成功しました。管理業務のような非コア業務は、自社で抱え込むよりも専門ノウハウを持つ外部パートナーに任せることで、大きな効率化効果が得られることを示す事例です。
業務効率化を進める際の注意点
これらの事例に共通しているのは、やみくもに施策を導入するのではなく、課題の明確化から着手している点です。業務効率化を推し進めるうえでは、次の3点を意識することが重要です。
- 現在の課題は明確になっているか:どの業務に、どれだけの工数・人員がかかっているのかを可視化できていないまま施策を選んでしまうと、効果の薄い取り組みに時間を割いてしまう恐れがあります。
- 効果について仮説を立てられているか:施策を実行する前に「この改善によってどの程度の効果が見込めるか」という仮説を持つことで、効果検証の精度が高まります。
- 実行したままになっていないか:可視化された問題点に飛びついて施策を実行するだけで満足せず、ロードマップを策定し、関係部署を巻き込みながら継続的に推進する体制を整えることが欠かせません。
業務効率化は一度の施策で完結するものではなく、可視化・優先順位付け・施策決定・効果検証というサイクルを繰り返しながら、自社に合った形へと磨き上げていく取り組みです。今回紹介したステップや施策、事例を参考に、自社の業務のどこから着手すべきかを見極めてみてください。
まとめ
業務効率化を図るとは、業務に潜む「ムリ」「ムダ」「ムラ」を取り除き、コスト削減・生産性向上・従業員のモチベーション向上につなげる取り組みです。成果を出すには、可視化・優先順位付け・施策決定・効果検証という4ステップを順序立てて進めることが欠かせません。施策を選ぶ際は、廃止・削減から機械化までを優先順位付けした「改善の8原則」を軸に、マニュアル化・自動化・アウトソーシングなどを組み合わせるとよいでしょう。RPAや生成AI、ビジネスチャットといったツールは、こうした施策を後押しする手段として活用できます。まずは自社の業務を可視化し、どこから着手すべきかを見極めることから始めてみてください。
// TOPICS


