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AI補助金2026年版|使える5制度と採択率を徹底比較
// この記事を書いた人
株式会社Global Design Factory 代表取締役
高橋 遼
北海道大学工学部でAIによる自然言語処理を研究。P&Gにてビッグデータ解析・消費者分析を担当した後、伊良コーラのマーケティング責任者を経て、現在は株式会社Global Design Factory代表取締役として、中小企業を中心にAIを活用した業務効率化・自動化を支援。

「AIを導入して業務効率化を進めたいけれど、どの補助金が使えるのか分からない」と感じていませんか。2026年度からIT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金」へと名称が変わり、AI活用を意識した見直しも進んでいます。しかし制度は5つの申請枠に分かれ、さらにものづくり補助金や中小企業省力化投資補助金など類似制度も複数存在するため、自社に合う制度を選ぶのは簡単ではありません。この記事では、AI導入で使える主要5制度の違いを早見表で整理し、最新の採択率や申請の流れ、生成AIツール・パソコンの補助対象になるかどうかの誤解されやすいポイント、さらに申請時に共通して押さえておきたい注意点まで、実務に即して解説します。
AI導入で使える補助金の全体像と選び方
「AI 補助金」と一口に言っても、実は名称や目的の異なる複数の制度が存在しており、どれが自社に合うのかを最初に見極めることが遠回りを防ぐ第一歩です。まずは制度を選ぶ前に押さえておきたい3つの視点と、AI導入で使える主要5制度の全体像を整理します。
AI導入補助金を探す前に確認したい3つの視点(目的・投資規模・対象経費)
補助金選びで失敗しがちなのは、「AIが使えそうだから」という理由だけで制度を選んでしまうケースです。実際には、制度ごとに想定している投資規模も対象経費も大きく異なるため、次の3つの視点で自社の状況を整理してから制度を絞り込むことをおすすめします。
- 目的:何のためにAIを導入したいのかを明確にします。例えば「クラウド会計ソフトやチャットボットなどのITツールを導入したい」のか、「工場や店舗にAIカメラ・ロボットを導入して省人化したい」のか、「AIを活用した新製品・新サービスで新市場に打って出たい」のかによって、候補となる制度は全く異なります。
- 投資規模:数十万円規模のITツール導入なのか、数百万〜数千万円規模の設備投資なのかによって、検討すべき補助金の上限額のレンジが変わります。小規模な投資に大規模向けの補助金を選んでしまうと、要件を満たすための書類作成や事業計画策定の負担だけが増えてしまいます。
- 対象経費:ソフトウェアのライセンス費用やクラウド利用料が対象になる制度もあれば、ロボットやAIカメラといったハードウエア、あるいは専門家費用や事務費まで幅広くカバーする制度もあります。自社が支出したい費目が対象経費に含まれているかどうかは、申請前に必ず確認しておきたいポイントです。
この3つを整理しておくだけで、後述する早見表のどの制度から検討を始めればよいかが見えてきます。
AI導入に使える補助金・融資5制度の早見表
AI導入の目的別に活用できる主な制度を一覧にすると、次のように整理できます。それぞれの補助額・補助率・申請要件の詳細は、後続のセクションで個別に解説していきます。
| 制度名 | 主な目的 | 向いている企業像 |
|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) | ITツール・AIツールの導入によるデジタル化 | 会計・受発注・生成AIツールなどのソフトウエア導入でDXを進めたい中小企業・小規模事業者 |
| ものづくり補助金 | AIを活用した新製品・新サービスの開発 | 自社の技術やノウハウにAIを組み合わせ、高付加価値な製品・サービスを生み出したい事業者 |
| 中小企業省力化投資補助金 | AI・ロボット等による省人化・省力化 | 人手不足が深刻で、少ない人数で売上を維持・拡大したい企業 |
| 新事業進出補助金・小規模事業者持続化補助金 | 新市場開拓・販路拡大 | AIを活用した新事業への進出や、販路開拓を目指す中小企業・小規模事業者 |
| 日本政策金融公庫 IT活用促進資金 | IT関連設備投資の融資 | 補助金と併用しながらAI関連の設備投資資金を確保したい事業者 |
この中で、多くの中小企業・小規模事業者にとって最も間口が広く、まず検討すべき制度が「デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)」です。次のセクションでは、この制度の概要と5つの申請枠について詳しく見ていきます。
デジタル化・AI導入補助金2026とは?制度概要と5つの申請枠
「デジタル化・AI導入補助金」は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、AIを含むITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する国の補助制度です。中小企業庁によると、令和7年度補正予算事業から「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)」へと名称が変更されており、これまで「IT導入補助金」という名称で情報収集していた方は、まずこの名称変更を押さえておく必要があります。
制度としては、通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)・セキュリティ対策推進枠・複数者連携デジタル化・AI導入枠という5つの申請枠が用意されており、自社の目的や企業規模に応じて最大450万円までの補助を受けられます。それぞれ対象経費や補助率が異なるため、まずは全体像を押さえたうえで、自社に合う枠を絞り込んでいくのが効率的です。
旧IT導入補助金からの変更点とAIツールの扱いの明確化
名称変更にともなって注目したいのが、AI活用を意識した機能が新たに加わった点です。NTTドコモビジネスの解説によれば、2026年度からはAI機能を持つITツールを絞り込んで検索できる機能などが追加されており、AI関連ツールを導入したい事業者にとって制度自体が探しやすくなっています。
これまでの「IT導入補助金」は会計ソフトや受発注システムなど、業務のデジタル化そのものを支援する色合いが強い制度でした。名称に「AI導入」が加わったことで、生成AIやAIを活用したシステムの導入も制度の主要な支援対象として位置づけられたとみることができます。ただし、どのようなAIツールでも無条件に対象になるわけではなく、対象経費の線引きについては別途注意が必要です(詳細は後述のセクションで扱います)。
なお、通常枠の申請は交付申請期間中、1法人・1個人事業主あたり1申請のみという制限があります。ただし補助金ポータルの情報によると、通常枠と同時にインボイス枠やセキュリティ対策推進枠へ申請することは可能とされているため、複数の目的を持つ事業者は枠の組み合わせも検討する価値があります。
通常枠の補助額・補助率
通常枠は、ソフトウェア購入費・クラウド利用料・導入関連費などを対象経費とする、最もオーソドックスな申請枠です。hs-kaikei.comの情報によると、補助額は以下の2つの帯に分かれています。
- 5万円以上150万円未満の枠
- 150万円以上450万円以下の枠
補助率は原則1/2以内ですが、一定の条件を満たすことで2/3以内まで引き上げられます。また補助金ポータルによると、基本の補助率は1/2であるものの、小規模事業者が賃上げ等の一定要件を満たした場合には4/5まで引き上げが可能とされています。上限額としては1者あたり最大450万円と、5つの申請枠のなかでも高水準の補助が用意されている点が特徴です。
自社の規模や賃上げの取り組み状況によって実際に受けられる補助率は変わってくるため、公募要領で自社が該当する条件を確認しておくことが重要です。
インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)の補助額・補助率
インボイス枠は、その名の通りインボイス制度への対応に特化した支援枠です。富士フイルムビジネスイノベーションの情報によると、対象経費は会計・受発注・決済ソフトに加えて、パソコン・タブレット・レジ・発券機といったハードウエア費用の一部にも及びます。補助率は事業者規模によって次のように分かれています。
- 小規模事業者:補助率4/5
- 中小企業:補助率3/4
通常枠に比べて補助率が高く設定されているのが特徴で、インボイス対応にあわせてハードウエアの入れ替えも検討している事業者にとっては有利な選択肢になり得ます。
もう一つの類型である電子取引類型は、やや仕組みが異なります。補助金ポータルの解説によると、発注側の企業がインボイス制度に対応したITツールを導入し、その取引相手である中小企業や小規模事業者等に対して同じツールを無償で提供する場合に対象となる仕組みです。自社単独での申請というより、取引先との関係性のなかで活用する枠といえます。
セキュリティ対策推進枠・複数者連携デジタル化・AI導入枠の補助額・補助率
セキュリティ対策推進枠は、中小企業のサイバーセキュリティ対策そのものを支援する枠です。補助金ポータルによると、相談窓口対応、異常の監視、事案発生時の初動対応(駆けつけ支援等)、簡易サイバー保険などをワンパッケージで提供するサービスが対象となり、IPAが公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されたサービスのみが対象ツールとして認められます。ITツールの導入というよりは、セキュリティ体制の外部委託に近いイメージを持つとわかりやすいでしょう。
複数者連携デジタル化・AI導入枠は、商店街やサプライチェーンなど複数の中小企業・小規模事業者が連携して、共通のITツールやAIシステムを導入する取り組みを支援する枠です。中小企業経営支援事務所の情報によれば、通常枠よりも高い補助率が設定されており、対象経費もITツール本体だけでなく、消費動向分析やAIカメラなどを活用したデータ分析、事業全体を推進するための事務費や専門家費用にまで広がっています。
具体的な対象ITツールの例として、中小企業庁の資料では次のようなものが挙げられています。
- 消費動向分析システム
- 経営分析システム
- 需要予測システム
- 電子地域通貨システム
- キャッシュレスシステム
- 生体認証決済システム
いずれもクラウド利用料については1年分が対象となる点も押さえておきたいポイントです。単独企業では投資しづらい高度なAIシステムでも、商店街や取引先グループでまとまって導入する形であれば、この枠を活用できる可能性があります。自社が単独で動くのか、周囲の事業者と連携できるのかによって、選ぶべき枠が変わってくる点は意識しておくとよいでしょう。
デジタル化・AI導入補助金2026の申請の流れとスケジュール
デジタル化・AI導入補助金2026は、補助率や申請枠を理解しただけでは申請できません。実際の交付申請に進むには、事前準備からIT導入支援事業者との共同作業まで、いくつかのステップを順番どおりに踏む必要があります。ここでは「いつ・何を・どの順番で行うか」という時間軸に絞って整理します。
申請前に必須のGビズIDプライム取得とSECURITY ACTION宣言
デジタル化・AI導入補助金の申請には、まず「GビズIDプライム」というアカウントの取得が欠かせません。GビズIDは各種行政サービスにアクセスできる認証システムで、IT導入補助金の申請で利用できるのは「プライム」アカウントのみです。エントリーやメンバーといった他の種類のアカウントでは申請できないため、種類を間違えないよう注意が必要です(大塚商会ERPナビ)。
GビズIDプライムをまだ取得していない場合、発行までにおおむね2週間かかるとされています(大塚商会ERPナビ)。申請締切の直前になって慌てないよう、公募スケジュールを確認した段階で早めに取得手続きを始めることをおすすめします。
もう一つの必須要件が「SECURITY ACTION」の宣言です。SECURITY ACTIONは中小企業が情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度で、「★一つ星」または「★★二つ星」のいずれかの宣言が申請要件となっています(中小企業経営支援事務所)。GビズIDの取得と合わせて、申請準備の初期段階でクリアしておくべき項目です。
これらの事前準備には数週間を要する場合があるため、公募開始を待ってから動き出すのではなく、早い段階から並行して進めておくことが重要です。また、交付決定前に発注や支払いを行ってしまうと補助対象外となってしまうため、事前準備と発注のタイミングを混同しないよう注意しましょう(NTTドコモビジネス)。
IT導入支援事業者との共同申請から交付決定までの流れ
デジタル化・AI導入補助金は、事業者が単独で申請できる制度ではありません。事務局に登録された「IT導入支援事業者」、いわゆるITベンダーなどとパートナーシップを組んで共同申請する仕組みになっています(soichiro.co.jp)。導入したいITツールが決まったら、そのツールを取り扱うIT導入支援事業者に相談し、事業計画の策定から交付申請までを二人三脚で進めていく流れです。
大まかな流れは次のとおりです。
- GビズIDプライム取得・SECURITY ACTION宣言などの事前準備を済ませる
- 導入したいITツールを扱うIT導入支援事業者を選定し、相談を開始する
- IT導入支援事業者と共同で事業計画を策定し、交付申請を行う
- 事務局による審査を経て、交付決定の通知を受ける
- 交付決定後にツールの発注・契約・支払いを行う
- 事業実施後、実績報告を提出する
ここで特に注意したいのは、交付決定前の発注は補助対象外になるという点です(NTTドコモビジネス)。IT導入支援事業者との相談・申請準備は早めに始めつつ、実際の契約や支払いは必ず交付決定通知が届いてから行うようにしましょう。
なお、2回目以降の申請では3年間の事業計画の策定が必要になり、計画が未達に終わった場合は補助金の返還を求められるリスクがある点にも留意が必要です(行政書士潮海事務所)。
2026年度の公募回・締切日一覧
2026年度のデジタル化・AI導入補助金は、2月27日に公募が開始され、3月30日から交付申請の受付が始まりました(行政書士潮海事務所)。申請は複数回の締切に分けて実施される「複数回締切制」で、2026年8月25日17:00は全枠共通の4次締切にあたります(行政書士潮海事務所)。
4次締切分の交付決定日は10月7日(水)が予定されており、事業実施期間・実績報告期限は交付決定から2027年3月31日(水)17:00までとされています(行政書士潮海事務所)。
枠によって締切日程が異なる点にも注意が必要です。インボイス枠(電子取引類型)は1次締切が2026年5月12日、2次締切が6月15日、3次締切が7月21日、4次締切が8月25日、5次締切が9月29日、6次締切が10月30日と、比較的細かく設定されています(デジデジ)。一方、複数者連携デジタル化・AI導入枠は1次締切が2026年6月15日、2次締切が8月25日、3次締切が10月30日という3回の締切構成です(デジデジ)。
このように枠ごとに締切のタイミングが異なるため、自社が申請したい枠のスケジュールを個別に確認し、逆算してIT導入支援事業者との準備を進めることが、申請を滞りなく進めるポイントになります。
デジタル化・AI導入補助金2026の採択率と審査を通すポイント
「補助金は申請すれば必ずもらえる」と思われがちですが、実際にはそうではありません。デジタル化・AI導入補助金2026でも、申請したうち半数前後しか採択されない枠があり、事前に採択率の水準を把握しておくことが、申請戦略を立てるうえで欠かせません。ここでは、公表されている最新の採択結果と、審査を通すために押さえておきたいポイントを整理します。
通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠それぞれの採択率
補助金ポータルが公表しているデータによると、2026年度の1次締切・2次締切では、以下のような採択率となっています。
1次締切(2026年6月18日公表)
- 全体の採択率は46.3%で、申請しても半数以下しか採択されない厳しい結果でした
- セキュリティ対策推進枠は72.73%と高めの数字ですが、申請数自体が88件と少なく、実質的には通常枠とインボイス枠(インボイス対応類型)が申請の大半を占めています
- 通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型)はいずれも半数程度の採択率にとどまっています
2次締切
- 全体の採択率は51.5%(申請5,697者に対して交付決定2,935者)
- 通常枠:43.59%
- インボイス枠(インボイス対応類型):55.30%
- セキュリティ対策推進枠:71.43%
- 複数者連携デジタル化・AI導入枠は1次締切分で申請2者・交付決定1者という結果でした
これらの数値を見ると、セキュリティ対策推進枠は比較的採択されやすい一方、申請件数が最も多い通常枠は4割台と、決して通りやすい枠ではないことがわかります。参考までに、旧IT導入補助金の第1回公募では、通常枠50.72%・インボイス枠(対応類型)55.56%・セキュリティ対策推進枠100%という結果が出ており、当時と比べても通常枠の採択率はやや厳しくなっている傾向がうかがえます。
なお、複数者連携デジタル化・AI導入枠は申請件数自体がまだ少なく、採択率だけで通過難易度を判断するのは早計です。今後の締切回で申請数が増えるにつれ、傾向がより明確になっていくと考えられます。
採択率を左右する賃上げ要件・加点減点のポイント
採択率の数字だけを見ると「運任せ」に思えるかもしれませんが、実際には審査に影響する明確な減点措置が存在します。行政書士潮海事務所の解説によると、以下のようなケースは減点対象となります。
- 過去の交付決定歴がある場合:IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けたことがある事業者は減点対象になります
- 賃上げ要件の未達がある場合:過去に賃金引上げ加点で採択されたにもかかわらず、その要件を満たせなかった事業者はさらに減点されます
- 同一機能のツールを重複導入する場合:既に導入済みのITツールと同一機能を持つツールを申請する場合も減点対象です
特に注意したいのは、賃上げ要件に関する減点です。デジタル化・AI導入補助金では、賃上げに取り組む事業者を優遇する加点措置が用意されている一方で、一度加点を得て採択されたのに実際には賃上げを達成できなかった場合、次回以降の申請でマイナス評価を受ける仕組みになっています。つまり、賃上げ計画を安易に盛り込んで加点を狙うと、後々の申請で不利になるリスクがあるということです。
また、2回目以降の申請では3年間の事業計画の策定が求められ、その計画が未達に終わった場合は補助金の返還を求められるリスクもあります。目先の採択率を上げることだけを考えるのではなく、実現可能な計画を立てたうえで申請することが、結果的に長期的な信頼と採択のしやすさにつながります。
こうした減点要素を避け、初めて申請する事業者や、過去の実績が良好な事業者は、相対的に審査で有利になりやすいと言えます。申請前には、自社が減点対象に該当しないかを一度確認しておくとよいでしょう。
生成AIツール・パソコンは補助対象になる?よくある誤解を整理
「ai 補助金」で情報を探している方の多くが気になるのが、「そもそも自社が使いたいAIツールは補助対象になるのか」「パソコンやタブレットを買い替える費用は出るのか」という具体的な線引きです。ここでは、特に誤解が生まれやすい2つのポイントを整理します。
生成AIツールが補助対象として明確化された背景
デジタル化・AI導入補助金2026では、AI機能を持つITツールを対象ツールの中から絞り込んで検索できる機能が新たに加わるなど、制度全体としてAI活用を意識した見直しが進んでいます(NTTドコモビジネス)。もともとこの補助金は、中小企業・小規模事業者の労働生産性向上を目的として、AIを含むITツール(ソフトウェア、サービスなど)の導入を支援する制度として設計されており、生成AIツールであること自体が申請の妨げになるわけではありません(中小企業庁)。
特に「複数者連携デジタル化・AI導入枠」では、商店街やサプライチェーン全体で共通のITツールやAIシステムを導入する取り組みが支援対象となっており、消費動向分析システムやAIカメラを使ったデータ分析なども対象ツールの例として挙げられています(中小企業経営支援事務所、中小企業庁PDF)。単独の企業では投資判断がしにくい高度なAIシステムであっても、複数事業者で連携することで補助対象に含めやすくなる、という制度上のねらいがあるといえます。
なお、生成AIやデータ分析ツールの導入が優遇される傾向にあるという見方もありますが、これは一部の解説記事による見解であり、制度上の条文で「生成AIを優遇する」と明記されているわけではない点には注意が必要です。実際に申請する際は、検討中のツールが交付規程や公募要領上の「対象ITツール」として事務局に登録されているかどうかを、必ずIT導入支援事業者と一緒に確認することをおすすめします。
パソコン・タブレット単体では申請できない理由
もう一つ誤解が多いのが、「AI導入のためにパソコンやタブレットを新調したい」というケースです。結論からいうと、パソコン・タブレット・レジ・発券機といったハードウエアは、原則として単体では補助対象になりません。
これらのハードウエアが対象になるのは、あくまでインボイス枠において、会計ソフトや受発注ソフト、決済ソフトなどのITツールとあわせて導入する場合に限られます(富士フイルムビジネスイノベーション)。つまり、「ソフトウェアの導入という本体」があり、それを使うために必要な周辺機器としてハードウエアの費用の一部が補助されるという位置づけです。この枠であれば、小規模事業者は補助率4/5、中小企業は3/4という高めの補助率が設定されています(富士フイルムビジネスイノベーション)。
一方、通常枠の対象経費はソフトウェア購入費・クラウド利用料・導入関連費が中心であり(hs-kaikei.com)、「AIを使いたいのでとりあえず高性能なパソコンを買う」という発想での単独申請は想定されていません。AI関連のクラウドサービスやソフトウェアを導入し、その実行環境として必要なハードウエアを合わせて整備したい場合は、
- 導入したいのはソフトウェアかハードウエアか
- インボイス対応ソフトと同時に導入する計画になっているか
- どの申請枠の対象経費区分に該当するか
をあらかじめ整理したうえで、IT導入支援事業者に相談する流れが安全です。この線引きを誤ると、申請自体が受理されなかったり、交付決定後に対象外経費として減額されたりするリスクがあるため、早い段階での確認が欠かせません。
デジタル化・AI導入補助金以外にAI導入で使える補助金・融資4選
デジタル化・AI導入補助金はソフトウェアやクラウドサービスの導入に強い制度ですが、「AIを使った新製品を開発したい」「ロボットで省人化したい」「新しい市場に打って出たい」といった、より大がかりなAI活用を検討している場合は、他の補助金・融資制度のほうが適していることがあります。ここでは、デジタル化・AI導入補助金と重複しない4つの制度を、向いているAI活用シーン別に紹介します。
ものづくり補助金|AIを使った新製品・サービス開発に
AIを組み込んだ新製品や新サービスの開発、生産プロセスの革新などに取り組む場合は、ものづくり補助金が候補になります。現在は「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」の2つの枠で募集されており、目的に応じて選択します。
- 製品・サービス高付加価値化枠:AIを活用した新製品・新サービスの開発、生産性向上に資する設備投資などが対象です。
- グローバル枠:インボイス対応や海外企業との共同事業など、海外需要の開拓に取り組む事業者向けの枠で、補助上限は3,000万円です。
注目したいのが賃上げに関する特例です。大幅な賃上げに取り組む事業者は補助上限額が100万〜1,000万円上乗せされ、さらに最低賃金引き上げに取り組む事業者は補助率が2/3まで引き上げられます。AI導入によって生産性を高め、それを賃上げにつなげていく方針の企業には相性のよい制度といえます。
なお、以前はものづくり補助金の枠内で扱われていた「人手不足解消のための省力化投資」は、現在は別制度である中小企業省力化投資補助金が受け皿となっています。省人化・省力化が目的の場合は、次に紹介する制度を検討しましょう。
中小企業省力化投資補助金|AI・ロボットによる省人化に
人手不足に悩みながらも、ロボットやIoT、AIシステムの導入によって「少ない人数で売上を維持・拡大したい」と考える企業には、中小企業省力化投資補助金が適しています。
この制度には2つの入り口が用意されています。
- カタログ注文型:あらかじめ登録された製品カタログの中から、自社の課題に合う省力化製品を選んで導入する方式です。手続きが比較的簡易で、随時申請を受け付けています。
- 一般型:自社専用のシステムを構築する方式で、カタログにない独自のAI・ロボット活用を検討している場合に選択します。
補助上限額と補助率は次のとおりです。
- 一般型の補助上限額は最大1億円です。
- 補助率は中小企業が対象経費の1/2、小規模企業者・再生事業者は2/3です。
- 1,500万円を超える部分については補助率が1/3に引き下げられます。
一般型(第7回)の応募申請は2026年7月31日(金)17:00で締め切られており、次回以降の公募スケジュールは事務局の発表を確認する必要があります。一方、カタログ注文型は随時交付申請を受け付けているため、比較的スピーディーに動きたい企業はこちらから検討するとよいでしょう。
新事業進出補助金・小規模事業者持続化補助金|新市場開拓や販路拡大に
AIを活用して新しい市場に進出したい、あるいは既存事業の販路を広げたいという場合は、新事業進出補助金や小規模事業者持続化補助金が選択肢になります。
新事業進出・ものづくり補助金には「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3つの枠があります。
- 補助上限は最大2,500万〜9,000万円で、枠・従業員数・賃上げ特例によって変動します。
- 補助率は中小企業者で1/2〜2/3です。
- 補助下限額は枠によって100万円または750万円と幅があります。
なかでも新事業進出枠は、既存事業とは異なる新しい市場・新しい取り組みに進出する事業者向けの枠で、補助上限額は従業員規模に応じて750万円〜2,500万円、補助率は中小企業で1/2、小規模企業者は2/3です。他の枠よりも補助下限額が100万円と低く設定されているため、比較的小規模な新事業への進出でも活用しやすいのが特徴です。
一方、小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓を支援する制度として位置づけられています。AIを活用した集客・マーケティング施策やWebサイト改善などに取り組みたい小規模事業者にとっては候補となり得ますが、具体的な補助上限額・補助率については最新の公募要領で確認することをおすすめします。
日本政策金融公庫のIT活用促進資金|補助金と併用できる融資
補助金は基本的に後払いであるため、導入時にはまとまった自己資金や立て替え資金が必要になります。この資金繰りを補う手段として検討したいのが、日本政策金融公庫の「IT活用促進資金」(企業活力強化貸付)です。
- 融資限度額は運転資金が4,800万円、設備資金が7,200万円です。
- 対象となるのは、営業でのタブレット端末などIT機器の活用、業務プロセスのシステム化に必要な費用、情報の一元管理のためのクラウドシステム導入に必要な費用などです。
急速に進むIT化への対応を後押しする制度であり、AI関連のシステム投資にも活用できます。補助金は交付決定前の発注・支払いが対象外になるという制約がありますが、融資であれば資金調達のタイミングを柔軟に調整しやすいというメリットがあります。補助金の交付までのつなぎ資金として、あるいは補助金の対象外となる経費の調達手段として、あわせて検討する価値があるでしょう。
AI導入補助金を申請する際の注意点
デジタル化・AI導入補助金をはじめ、ものづくり補助金や中小企業省力化投資補助金など、AI導入で使える各種制度には、申請枠や補助率の違いを超えて共通する「落とし穴」が存在します。せっかく制度を選び、申請書類をそろえても、これから紹介する基本ルールを知らずに動いてしまうと、補助対象外になったり、資金繰りに行き詰まったりするおそれがあります。実際に申請へ進む前に、横断的な注意点として押さえておきましょう。
交付決定前の発注・契約は補助対象外になる
補助金全般に共通する最も重要なルールが、交付決定前の発注・契約・支払いは補助対象外になるという点です。NTTドコモビジネスも指摘しているとおり、申請さえ済ませれば早めに導入を進めてよいというわけではなく、事務局から正式な交付決定通知を受け取ったあとでなければ、発注や契約、支払いを行っても補助金の対象として認められません。
- 「見積もりだけ先に取っておく」のは問題ありませんが、契約書を交わしたり、前払いをしたりするのはNGです
- ITツールの導入を急ぎたい気持ちから、担当者や導入支援事業者との調整で「先に契約してしまう」ケースが起こりがちなので注意が必要です
- 複数の補助金を並行して検討している場合、それぞれの交付決定日を混同しないよう、制度ごとにスケジュールを一覧で管理することをおすすめします
また、事後的に「実は導入していました」と申請することも認められません。あくまで補助金は「これから行う投資」を後押しする制度であるため、事業計画の立案から交付決定まで、順序を守って進める姿勢が求められます。申請前にGビズIDの取得やIT導入支援事業者との調整に時間がかかることを踏まえると、逆算して「いつまでに交付決定が下りるか」を把握し、それまでは絶対に発注しないというルールを社内で徹底しておくことが大切です。
補助金は後払いのため資金繰りの準備が必要
もう一つ見落とされがちなのが、補助金は原則として後払い方式であるという点です。交付決定を受けたあとに事業者自身が費用を立て替えて発注・導入・支払いを行い、実績報告を提出したうえで、審査を経てようやく補助金が入金される流れになります。つまり、補助金が手元に届くまでの間は、ITツールやシステムの導入費用を全額自己資金や借入金でまかなう必要があるのです。
- 補助上限額が大きい制度ほど、立て替え期間中のキャッシュフローへの影響も大きくなります
- 実績報告から入金までにも一定の期間がかかるため、「補助金が入るまでの数か月間」を見越した資金計画を立てておくことが欠かせません
- つなぎ資金が必要な場合は、日本政策金融公庫のIT活用促進資金のような融資制度と併用する選択肢も検討に値します
さらに、複数の補助金を同時に活用したいと考える場合は、同一の経費に対して重複して補助を受けることは認められていない点にも注意が必要です。デジタル化・AI導入補助金の通常枠のように「1法人・1個人事業主あたり1申請」と申請数そのものが制限されている枠もあれば、対象経費が重なる制度同士を併用しようとして調整が必要になるケースもあります。制度ごとの要件を個別に確認し、資金繰りと申請計画の両面から無理のないスケジュールを組むことが、AI導入補助金を着実に活用するための鍵になります。
まとめ
AI導入で活用できる補助金は、ITツール導入なら「デジタル化・AI導入補助金」、新製品開発なら「ものづくり補助金」、省人化なら「中小企業省力化投資補助金」、新市場開拓なら「新事業進出補助金・小規模事業者持続化補助金」というように、目的によって最適な制度が異なります。デジタル化・AI導入補助金は最大450万円の補助が受けられる一方、採択率は通常枠で4割台と決して高くなく、賃上げ要件の未達や過去の交付歴による減点にも注意が必要です。また、交付決定前の発注は補助対象外になること、補助金は後払いのため資金繰りの準備が欠かせないことも共通の落とし穴です。まずはGビズIDプライムの取得を進めながら、自社の目的に合う制度を絞り込み、IT導入支援事業者や専門家に相談することから始めてみてください。
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