// ARTICLE · AI基礎

AIエージェントとは?生成AIとの違いと製品6選

公開 更新

// この記事を書いた人

株式会社Global Design Factory 代表取締役 高橋 遼

株式会社Global Design Factory 代表取締役

高橋 遼

北海道大学工学部でAIによる自然言語処理を研究。P&Gにてビッグデータ解析・消費者分析を担当した後、伊良コーラのマーケティング責任者を経て、現在は株式会社Global Design Factory代表取締役として、中小企業を中心にAIを活用した業務効率化・自動化を支援。

// SHARE

AIエージェントとは?生成AIとの違いと製品6選

AIエージェントとは、目標を伝えると、達成までの手順を自分で考え、ツールやアプリを操作して実行まで進めるAIのことです。生成AI(ChatGPTのチャットなど)が「聞かれたことに答える」のに対し、AIエージェントは「頼まれた仕事を終わらせる」ところまで担う点が違います。

2026年10月現在、Claude の Cowork、ChatGPT Work、Gemini Spark、Microsoft 365 Copilot のエージェントなど、個人や会社ですぐに試せる製品がそろっています。この記事では、定義と生成AIとの違いを押さえたうえで、代表的な6つの製品、業務での使いどころ、小さく試す手順、権限・誤操作・情報漏洩への備えまでを順に説明します。

AIエージェントとは?意味と定義

AIエージェントを一文で表すと、「人の代わりに、目標達成までの判断と操作を続けるAIソフトウェア」です。たとえば「先週の売上データから会議用のスライドを作っておいて」と頼むと、ファイルを開いて数字を集計し、構成を考えてスライドを作り、足りない情報があれば探し直す——ここまでを逐一の指示なしに進めます。

この言葉は2025年に急速に広まりました。情報処理推進機構(IPA)の技術コラムでも、2025年は「AIエージェント元年」と表現されています(出典:IPA「SDS技術コラム:AIエージェント」2025年7月8日公開)。

OpenAI・Google・Gartner・AICX協会が示す定義

AIエージェントの定義は、企業や団体によって表現が少しずつ異なります。ただし、いずれも「自律性」と「目的達成のための行動」の2つを核にしている点は共通しています。

  • OpenAI:エージェントを「ユーザーの代わりにタスクを自律的に実行するシステム」と定義しています。人間の作業を代行する存在としての側面が強調されています。
  • Google(Google Cloud):「AIエージェントは、AIを使用してユーザーの代わりに目標を追求し、タスクを完了させるソフトウェアシステム」と定義しています。「目標を追求する」というプロセス面にも触れている点が特徴です。
  • Gartner:「デジタルおよび現実の環境で、状況を認識し、意思決定を下し、アクションを起こし、目的を達成するためにAI技術を適用する、自律的または半自律的なソフトウェア」と定義しています。認識から行動までの流れを分解している点が特徴的です。
  • 一般社団法人AICX協会:「AIエージェントとは、自律的に判断・行動し、特定の目的に向けて人間をサポートする知的なソフトウェアシステム」と定義しています。人間の「サポート役」という位置づけを明確にしています。

(いずれもIPA「SDS技術コラム:AIエージェント」経由の情報をもとに整理)

4つの定義に共通するのは、次の2点です。

  1. 人間の指示・目標を起点として動く
  2. 判断や行動を自律的(あるいは半自律的)に行う

Gartnerの定義から読み取れる5つの特性

Gartnerの定義文を要素に分けると、AIエージェントに求められる特性は次の5つに整理できます。

  1. 状況認識:デジタル環境・現実環境の状態を把握する力
  2. 意思決定:把握した状況に基づいて、次に取るべき行動を判断する力
  3. アクション(行動実行):判断した内容を実際の操作やタスクとして実行する力
  4. 目的達成への指向性:単発の応答ではなく、最終的なゴールに向かって行動を続ける力
  5. 自律性(自律的・半自律的):人間が都度指示を出さなくても、一定の範囲で自ら判断・行動できる力

決められたルールどおりに動くだけの自動化ツールは、このうち「状況認識」や「意思決定」の要素が乏しいのが一般的です。その場の状況を読み取り、判断を重ねながら行動を続けられるかどうかが、AIエージェントを見分けるポイントになります。

AIエージェントと生成AI(ChatGPTなど)の違い

生成AIは、ユーザーからの入力(プロンプト)に応じて、文章や画像などを生成するのが主な役割です。要約やアイデア出しなど、人間が対話の主導権を握り、その都度指示を出す前提で動きます。

一方、AIエージェントは目標に対して自ら計画を立て、ファイルやアプリ、Webブラウザなどを操作しながら複数のステップを進めます。「この目的を達成してほしい」というゴールを渡せば、その先の判断と操作をエージェント自身が担う点が最大の違いです。

目的・機能・外部連携・活用例の比較表

観点生成AI(チャット)AIエージェント
目的指示に応じたコンテンツの生成設定された目標の達成
機能対話・要約・作成など単発の応答計画・実行・確認を含む一連の作業
外部連携単体での応答が中心ファイル・アプリ・ブラウザ・社内システムを操作
人間の関与都度の指示・確認が前提目標設定後は自律的に進み、重要な操作で確認を求める
成果物回答文・下書き完成したファイル、更新されたデータ、送信前のメールなど
活用例文章作成、翻訳、アイデア出し定例レポートの作成、データの突合、調査レポートの作成

両者は対立する技術ではありません。AIエージェントの多くは、内部で生成AI(大規模言語モデル)を「頭脳」として使い、そこに操作の手段を組み合わせています。

なお、「ChatGPTはAIエージェントなのか」という疑問には、「使い方による」が答えです。普段のチャットは生成AIの使い方ですが、後述の ChatGPT Work のように、アプリやファイルをまたいで仕事を進めるモードはAIエージェントにあたります。質問に答えて作業を手伝うAIアシスタントとの違いと代表サービスも、あわせて押さえておくと整理しやすくなります。

「エージェント型AI」「マルチエージェント」との違い

「AIエージェント」は自律的にタスクを実行する個々のソフトウェアを指す場面が多く、「エージェント型AI(エージェンティックAI)」は、そうした自律性を持つAIのあり方や技術の潮流を指す、より広い言葉として使われる傾向があります。ただし業界内でも呼び分けは統一されておらず、同じ意味で使われることも少なくありません。

「マルチエージェント」は、役割の異なる複数のAIエージェントが分業してタスクを進める仕組みです。全体を統括するエージェントが仕事を分解し、専門のサブエージェントに割り振って結果をまとめる構成が代表例です。複数のエージェントやツールを1つの業務の流れとしてつなぎ、順番や受け渡しを管理する考え方はAIオーケストレーションと呼ばれます。

あらかじめ決めた手順どおりに処理を流す「AIワークフロー」やRPAとの使い分けは、AIワークフローとエージェント・RPAの違いで詳しく比べています。

いま使える代表的なAIエージェント6選(2026年10月時点)

「AIエージェントで有名なものは?」「どれを使えばよい?」という疑問に答えるため、主要な企業が提供している製品を一覧にしました。機能や提供条件は更新が速いため、導入前は各社の公式ページで最新情報を確認してください。

製品(提供元)主な用途できることの例主な利用条件
Claude Cowork(Anthropic)事務・資料作成・調査手元のファイルを読み、Excel・PowerPoint・文書を作る/ブラウザ操作/定期実行Claude の有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)
Claude Code(Anthropic)ソフトウェア開発コードを読み、ファイルを編集し、コマンドを実行してプルリクエストまで進めるClaude の有料プランまたは Anthropic Console
ChatGPT Work(OpenAI)長めの業務タスク連携したアプリやファイルをまたいで調べ、文書・表・スライドを仕上げるプランごとに順次提供
Gemini Spark(Google)個人の作業代行Gmail の整理、ニュースの追跡、Google ドキュメントやカレンダーの操作Google AI Pro / Ultra、18歳以上、個人アカウント
Microsoft 365 Copilot のリサーチ ツール・アナリスト(Microsoft)社内調査・データ分析メール・会議・ファイルとWebから出典付きレポートを作る/複数のExcelを分析する組織の Microsoft 365 Copilot の契約
GitHub Copilot クラウド エージェント(GitHub)ソフトウェア開発Issue を受けてリポジトリを調べ、変更を実装してプルリクエストを作るGitHub Copilot のプランと組織のポリシー

Claude Cowork と Claude Code(Anthropic)

Claude Coworkは、Claude のデスクトップアプリやWebで使えるエージェント機能です。公式ヘルプでは、Claude Code と同じ仕組みを、コーディング以外の知識労働に持ち込んだものと説明されています。手元のファイルを直接読み、計算式の入ったExcel、PowerPoint、整形済みの文書を作るほか、ブラウザでのページ操作やフォーム入力、決まった時刻に動くスケジュール実行もできます。毎週月曜に先週のマーケティング数値をまとめたスライドを作る、各地域の予算ファイルを突き合わせて差異に印を付ける、といった使い方が公式に例示されています。通常のチャットとの使い分けや料金はClaude Cowork とチャットの違いで、ブラウザ上の操作を任せる方法はClaude in Chromeの使い方で説明しています。

Claude Codeは、開発向けのAIエージェントです。コードベースを読み取り、ファイルを編集し、コマンドを実行し、コミットやプルリクエストの作成まで進めます。ターミナル、VS Code などのIDE、デスクトップアプリ、ブラウザで使えます。機能と料金はClaude Codeの料金と使い方にまとめています。

ChatGPT Work(OpenAI)

OpenAI は2026年7月、長めの複数ステップの仕事を任せるモードとして「ChatGPT Work」を公開しました。調べものや分析をしながら、連携したアプリやファイルをまたいで作業し、文書・スプレッドシート・プレゼンテーション・レポートなどを仕上げます。進み具合を確認しながら、重要な操作は人が承認する設計です。2025年に登場したブラウザ操作エージェント「Operator」の機能は「ChatGPTエージェント」に統合され、さらに ChatGPT Work へと引き継がれています。提供範囲はプランと利用環境(Web・モバイル・デスクトップ)によって順次広がっているため、自分のプランで使えるかはアプリ内で確認してください。

Gemini Spark(Google)

Gemini Sparkは、Gemini アプリの中で動くパーソナルAIエージェントです。Gemini アプリ ヘルプによると、ニュースレターの要約やアーカイブ、メーリングリストの登録解除といった受信トレイの整理、関心のあるニュースの追跡、出典付きの調査、カレンダー・Gmail・ドキュメント・ドライブなどの操作ができます。利用には Google AI Pro または Ultra の契約、18歳以上、個人の Google アカウントでのログインが必要で、現時点では仕事用・学校用のアカウントでは使えません。メッセージの送信、データの変更、購入、Webフォームの送信の前には確認が求められます。

Microsoft 365 Copilot のエージェント(Microsoft)

Microsoft 365 Copilot には、目的別のエージェントが用意されています。リサーチ ツール エージェントは、Webと、アクセス権のあるファイル・メール・会議・チャットの両方から情報を集め、出典付きのレポートを作ります。通常の Copilot チャットより時間をかけて推論する設計で、複数の情報源にまたがる調査に向いています。アナリストは、Excel や CSV など複数のファイルをまとめて分析するエージェントです。社内のアクセス権限やポリシーをそのまま引き継いで動くため、Microsoft 365 を全社で使っている会社では導入の負担が小さい選択肢です。

GitHub Copilot クラウド エージェント(GitHub)

GitHub の公式ドキュメントによると、GitHub Copilot クラウド エージェントは、GitHub 上の Issue やプルリクエストから作業を受け取り、リポジトリを調べて変更を計画し、クラウド上の開発環境で実装するエージェントです。ブランチの作成、コミット、プッシュまでを行い、テストやリンターも実行します。1回のタスクで扱えるのはブランチ1つ・プルリクエスト1つで、セッションの最大実行時間は59分です。

企業が自社向けに作った事例:トヨタ「O-Beya」

汎用の製品を使うだけでなく、自社の業務に合わせてエージェントを作る企業もあります。トヨタ自動車は、振動や燃費など分野ごとの専門知識を持つ9つのAIエージェントからなる「O-Beya」を構築し、パワートレイン開発に携わる約800人のエンジニアが利用しています。ベテラン技術者の設計ノウハウを次の世代に引き継ぐのが狙いです(出典:Microsoft Source Asia「Toyota is deploying AI agents to harness the collective wisdom of engineers and innovate faster」2024年11月19日)。

研究開発の分野では、Google DeepMind の「AlphaEvolve」のように、試行錯誤を繰り返してアルゴリズムそのものを改良していくエージェントも登場しています。

自社のシステムに組み込むエージェントを開発する場合は、Claude Code と同じ仕組みを部品として使えるClaude Agent SDKのような開発キットを使う方法があります。

AIエージェントの仕組みと5つの種類

基本的な仕組み(環境認識→意思決定→行動→学習)

AIエージェントの動作は、次の4つのステップを繰り返すサイクルとして説明されます。

  • 環境認識(知覚):API、テキスト入力、業務システムのデータ、Webページの表示内容などから、置かれている状況を把握します。
  • 意思決定(推論・計画):集めた情報をもとに「次に何をすべきか」を判断します。大規模言語モデル(LLM)が、タスクを実行できる単位に分解して計画を立てます。
  • 行動(実行):外部ツールやAPIの呼び出し、フォームへの入力、ファイルの作成など、具体的な操作を行います。
  • 学習(フィードバック):行動の結果を確かめ、想定と違えば計画を修正して次の判断に生かします。

たとえば「今月の競合動向をレポートにまとめて」というゴールなら、「情報収集」「要約」「整形」「ファイル出力」に分け、1つずつ実行しては結果を確認します。このように考えることと行動することを交互に行わせる代表的な設計手法は「ReAct(Reasoning and Acting)」と呼ばれています。

このサイクルを支えているのは、主に次の3つの技術です。

  • LLM(大規模言語モデル):指示の意図を理解し、タスクの分解や次の行動を判断する「頭脳」にあたります。
  • ツール連携:LLM単体ではメール送信や社内データベースの検索はできないため、関数やAPI、MCP(Model Context Protocol)などでつないだツールを必要に応じて呼び出し、実行力を持たせています。
  • メモリ:会話の文脈を保つ短期記憶と、過去のやり取りや好みを蓄える長期記憶を組み合わせ、毎回ゼロから説明しなくても文脈に沿って動けるようにしています。

代表的な5つの種類(単純反射型/モデルベース型/目標ベース型/効用ベース型/学習型)

AIエージェントは、意思決定の複雑さに応じて一般に次の5種類に分類されます。

種類判断のしかた向いている場面
単純反射型「もし〇〇なら△△する」というルールで、目の前の入力だけに反応するFAQへの自動応答、決まった条件での振り分け
モデルベース型現在の状態や過去の履歴を内部に持ち、状況の変化も踏まえて判断する一時的に情報が欠けても動き続ける必要がある監視など
目標ベース型目標に近づく行動を、複数の選択肢から選んで計画する手順が決まっていない調べものや資料作成
効用ベース型目標を達成できるかに加え、コストや満足度など「どれだけ望ましいか」で選ぶ配送ルートや在庫量など、複数の条件の兼ね合いを取る判断
学習型行動の結果から判断基準を改善し続けるルールを事前に設計しきれない複雑な環境

5つの種類は排他的なものではなく、実際の製品は複数の要素を組み合わせています。いま話題の Cowork や ChatGPT Work のような汎用エージェントは、LLMで計画を立てる目標ベース型の性格が強く、ここに過去の作業を記憶する仕組みなどが加わっています。このほか、管理役のエージェントが子タスクを専門のエージェントに割り振る「階層型」も、実務でよく使われる構成です。

対応範囲で分ける見方もあります。幅広いタスクをこなす汎用型は柔軟な一方、特定業務の精度や社内規程への対応には調整が必要になる場合があります。経理処理やカスタマーサポートなどに絞った特化型は、対象業務のデータやルールに合わせているぶん精度を出しやすい傾向があります。

業務での使いどころ

AIエージェントが力を発揮するのは、「手順は毎回少しずつ違うが、ゴールははっきりしている」仕事です。部門ごとの代表的な使い方を整理します。

  • 営業・マーケティング:問い合わせ企業の情報をWebやCRMから集めて優先度を付ける、過去の提案書を参照して提案資料のたたき台を作る、週次の広告・アクセス数値を集めてレポートにする、といった使い方です。
  • カスタマーサポート:注文状況の確認や手続きの案内など、社内システムを調べて答える一次対応を任せ、複雑な相談は要約を付けて担当者に引き継ぎます。
  • バックオフィス:請求書や経費精算を規定と照合して差異に印を付ける、複数の部署から届いたExcelを突き合わせる、契約書を社内の基準と照らして一次チェックする、といった業務です。社内向けで影響範囲を絞りやすく、試験導入に向いています。
  • 情報システム・開発:社内ヘルプデスクの定型的な質問にマニュアルを参照して答える、Claude Code や GitHub Copilot クラウド エージェントにテストの追加や小さな修正を任せる、といった使い方が広がっています。
  • 製造・物流・小売:設備データから異常の兆候を見つけて点検を提案する、在庫と販売動向を突き合わせて発注量を提案する、といった使い方です。業界特有のデータや規制を扱うため、自社の業務ルールに合わせた特化型として設計するのが前提になります。

期待できる効果は、定型業務にかかる時間の削減、夜間や休日も作業を進められることによるリードタイムの短縮、担当者による品質のばらつきの抑制などです。決められた手順を正確に繰り返すRPAと違い、状況に応じて手順を組み立て直せるため、これまで自動化が難しかった非定型の業務にも手が届きます。どの業務からAIに任せるかの選び方は、業務選びから始める生成AIの使い方でも段階を追って説明しています。

小さく試す始め方5ステップ

いきなり全社導入を目指すより、手元の1業務で試して手応えを確かめるほうが確実です。

  1. 任せる業務を1つ決める:毎週発生し、手順がある程度決まっていて、失敗しても取り返しがつく業務を選びます。週次レポートの作成、議事録からのタスク整理、複数ファイルの突合などが候補です。
  2. すでに契約しているサービスから選ぶ:Microsoft 365 Copilot を契約している会社ならリサーチ ツール、Claude の有料プランがあれば Cowork、Google AI Pro なら Gemini Spark、というように、追加契約なしで試せるものから始めると稟議の手間が省けます。会社で使う場合は、社内ルールで認められたサービスとアカウントを使います。
  3. 権限を絞り、確認ありのモードで動かす:最初は読み取り専用のフォルダや、テスト用のデータだけを渡します。操作のたびに確認を求める設定があれば、それを使います。
  4. 成果物を人が確認し、時間を記録する:数週間ほど続け、作業時間がどれだけ減ったか、修正の手間がどれだけかかったかを記録します。効果が見えにくければ、指示の書き方や渡すデータを見直します。
  5. うまくいった手順を広げる:指示文や手順を社内で共有し、隣の業務や他の部署へ広げます。そのたびに、権限と確認の設定を見直します。

既存の基幹システムとの連携や、業界特有の業務に合わせた開発が必要な場合は、外部の開発会社への相談も選択肢になります。その際は、製品の販売だけでなく、業務の整理から運用まで伴走できるかを確かめましょう。

リスクと対策(権限・誤操作・情報漏洩)

AIエージェントは「自分で操作できる」ぶん、チャットで使う生成AIよりも失敗したときの影響が大きくなります。主なリスクと対策を整理します。

リスク起こりうること対策
誤操作・誤判断あいまいな指示を誤解して、意図しないファイルを書き換える・削除する。ハルシネーション(もっともらしい誤り)を前提に作業を進める削除・送信・購入などの取り消せない操作は人の承認を挟む。成果物は必ず人が確認する
権限の与えすぎ業務に不要なフォルダやシステムまで操作できてしまう業務に必要な範囲だけを渡す「最小権限」を徹底する。操作ログを残す
情報漏洩機密情報や個人情報を、会社が認めていないサービスに渡してしまう使ってよいサービスとデータの種類を社内で決める。ログイン情報や支払い情報はエージェントに直接入力しない
プロンプトインジェクションメールやWebページに埋め込まれた悪意ある指示に従ってしまう信頼できないページやファイルを扱うときは確認ありで動かす。外部への送信を伴う操作を制限する

主要な製品には、こうしたリスクへの仕組みが用意されています。Claude Cowork は、ファイルを完全に削除する前に必ず許可を求め、操作の前に確認する手動のモードや、各操作をリスクの観点でチェックして危険なものを止めるモードを選べます。公式ヘルプでは、お金やメッセージの送信、重要なファイルが関わる作業では、Claude の動きをそばで確認するよう勧めています。Gemini Spark も、メッセージの送信や購入などの前に確認を求め、機密情報を含むタスクを無人のスケジュール実行にしないよう案内しています。外部ツールをつなぐときの権限設計はClaude MCPの始め方と権限管理で、AI利用全般での情報漏洩の原因と対策はAI情報漏洩の4つの原因と事例で詳しく説明しています。

組織としての準備も欠かせません。Gartner は、エージェント型AIのプロジェクトの40%以上が、コストの増大、事業価値の不明確さ、リスク管理の不備により2027年末までに中止されると予測しています(出典:Gartner プレスリリース2025年6月25日)。話題性だけで大きなプロジェクトを始めず、効果を測れる小さな業務から積み上げることが、失敗を避ける近道です。

AIエージェントの今後

技術の方向性としては、次の3つが挙げられます。

  • 推論能力の向上:計画を立てて判断する力が上がるほど、任せられる仕事の範囲が広がります。
  • マルチエージェント化:調べる役・作る役・確認する役など、複数のエージェントが分業する構成が広がっています。
  • 長時間・常時稼働:Cowork のスケジュール実行や Gemini Spark のように、パソコンを閉じてもクラウド上で作業を続け、決まった時刻に動く製品が増えています。

自律的に動く時間が長くなるほど、「どこまで任せ、どこで人が確認するか」の設計が重要になります。製品の新機能を追うだけでなく、自社の権限設計や確認の手順をあわせて整えていく姿勢が求められます。

まとめ

AIエージェントとは、目標を伝えると手順を自分で考え、ファイルやアプリを操作して実行まで進めるAIです。聞かれたことに答える生成AIのチャットとは、仕事を終わらせるところまで担う点が違います。2026年10月時点では、Claude Cowork・Claude Code、ChatGPT Work、Gemini Spark、Microsoft 365 Copilot のエージェント、GitHub Copilot クラウド エージェントなど、すぐに試せる製品がそろっています。まずは既に契約しているサービスで、失敗しても取り返しがつく業務を1つ選び、権限を絞って確認ありのモードで試してみてください。成果を記録しながら範囲を広げることで、リスクを抑えて効果を確かめられます。

// SHARE

// RELATED