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経理業務の効率化はどう進める?原因から具体策まで解説

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株式会社Global Design Factory 代表取締役 高橋 遼

株式会社Global Design Factory 代表取締役

高橋 遼

北海道大学工学部でAIによる自然言語処理を研究。P&Gにてビッグデータ解析・消費者分析を担当した後、伊良コーラのマーケティング責任者を経て、現在は株式会社Global Design Factory代表取締役として、中小企業を中心にAIを活用した業務効率化・自動化を支援。

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経理業務の効率化はどう進める?原因から具体策まで解説

「経理業務を効率化したいが、何から手をつければよいか分からない」「ツールを導入しても定着しなかった」——こうした悩みを抱える経理担当者やバックオフィス責任者は少なくありません。紙・ハンコ文化や属人化、二重入力、法改正対応の負担が積み重なり、効率化がなかなか進まない企業も多いのではないでしょうか。本記事では、経理業務の効率化が進まない原因とそこから得られるメリットを整理したうえで、棚卸し→ECRSの原則による見直し→ツール選定→スモールスタートという実践的な4ステップと、ペーパーレス化やAI-OCR・RPA、アウトソーシングなど具体的な方法を紹介します。さらにSaaS・アウトソーシング・RPA・コンサルという4つの手段の使い分けや、成功事例、失敗しやすい落とし穴まで解説し、自社に合った進め方を判断できるようになることを目指します。

経理業務の効率化が進まない4つの原因

多くの企業で経理業務の効率化がなかなか進まない背景には、業務そのものの性質や組織文化に根ざした構造的な原因があります。ここでは代表的な4つの原因を整理します。

紙・ハンコ文化が残りアナログ作業が多い

経理部門では、紙の書類や押印を前提とした業務フローが根強く残っているケースが少なくありません。請求書や領収書を紙で受け取り、印刷・郵送・保管・検索といった一連の作業に多くの時間を割いている企業も多いのではないでしょうか。テレワークが普及した現在でも、「ハンコを押すためだけに出社する」という状況が起きているという指摘もあり、アナログな業務フローが業務効率化の大きな足かせになっています。

業務が属人化しブラックボックス化している

経理業務は専門知識を要するため、特定の担当者に業務が集中しやすく、属人化・ブラックボックス化が起こりやすい領域です。担当者が急に退職・休職した際に業務が滞ってしまう、ミスがあっても他の人が気づきにくい、といった問題が生じやすくなります。また、業務のやり方を熟知しているのが本人だけという状態になると、周囲から改善提案がしにくくなる点も見逃せません。専門性の高さゆえに他者への引き継ぎが難しいという性質も、属人化を助長する要因といえます。

手作業・転記による二重入力が多い

紙の書類や複数のシステムがバラバラに存在していると、同じ情報を何度も手入力・転記する二重入力が発生しがちです。伝票の内容をExcelに転記し、さらに会計システムに入力し直す、といった作業を経験したことがある方も多いはずです。こうした手作業は時間を消費するだけでなく、転記ミスというヒューマンエラーの温床にもなります。

法改正対応と人手不足で業務量が増え続けている

インボイス制度や電子帳簿保存法など、近年は経理業務に関わる法改正が相次いでいます。国税庁も要件を満たした電子データでの保存を求めており、制度が変わるたびに業務フローや書式の見直し、社内周知が必要になり、本来の業務に支障をきたすこともあります。加えて経理人材の採用難による人手不足も深刻化しており、限られた人員で増え続ける業務量をこなさなければならない状況が、多くの企業の経理部門を圧迫しています。さらに、バックオフィス業務は営業のように定量的なKPIを設定しにくいため、評価の仕組みがないと現状のやり方を変えてまで効率化に取り組む人が少なくなるという構造的な課題も指摘されています。

経理業務を効率化する4つのメリット

前章で見た紙・ハンコ文化や属人化、二重入力、法改正対応の負担といった課題は、放置していても自然には解消しません。しかし裏を返せば、これらの原因に手を打てば、経理部門は「時間」「正確性」「コスト」「経営判断」という4つの軸で確実にメリットを得られます。ここでは効率化に取り組むことで得られる一般的な効果を整理します。

作業時間を短縮しコア業務に集中できる

請求書処理や経費精算といった定型業務をシステムやツールで効率化すると、担当者の作業時間を大幅に短縮できます。これまで転記や照合、書類の回覧といった作業に費やしていた時間を圧縮できれば、その分を資金繰り分析や予算策定、経営層への報告資料作成といった付加価値の高いコア業務に振り向けられるようになります。単なる「作業の削減」ではなく、経理担当者がより本質的な仕事に時間を使える体制へと変わる点が、時間短縮のメリットの本質だといえます。

ヒューマンエラーが減り正確性が向上する

手入力や紙のやり取りが減るほど、転記ミスや確認漏れといった人為的ミスは小さくなります。システムが自動でデータを取り込み、仕訳候補まで作成してくれるようになれば、確認・差し戻しのやり取りも減り、月次決算を前倒ししやすくなります。ミスの発生自体が減るだけでなく、ミスに気づくまでの時間や修正にかかる手間も同時に減らせるため、経理担当者の心理的な負担軽減にもつながります。

残業代や人件費などのコストを削減できる

作業時間の短縮とミスの削減は、そのまま残業代や人件費といったコストの圧縮に直結します。月末月初に集中しがちな経理業務の繁忙期の負荷が下がれば、残業に頼らず業務を回せる体制に近づきます。また、特定の担当者に依存した業務進行が解消されれば、急な欠員が出た場合の代替要員確保や引き継ぎにかかるコストも抑えやすくなります。

属人化が解消され経営判断がスピードアップする

業務フローの標準化やシステム導入は、属人化の解消に直結します。誰が担当しても同じ手順で処理できる体制を整えれば、月次の試算表や資金繰り表がより早いタイミングで完成するようになります。その結果、経営層はより早く正確な数値に基づいた意思決定を下せるようになり、経理部門は単なる「数字をまとめる部署」から「経営判断を支える部署」へと役割を広げていくことができます。

経理業務の効率化は何から始める?進め方の4ステップ

「まずツールを導入する」という発想で経理業務の効率化に着手すると、多くの場合うまくいきません。現場のルールが整理されないままシステムだけを入れても定着せず、かえって確認作業が増えてしまうケースがあるためです。効率化を成功させるには、順番があります。ここでは棚卸し→見直し→ツール選定→スモールスタートという4つのステップで進め方を整理します。

STEP1 業務を日次・月次・年次で棚卸し・可視化する

最初に行うべきは、現状の業務を「日次・月次・年次」の単位で洗い出し、可視化することです。経費精算や請求書処理といった日々の作業から、月次決算、年次の税務対応まで、経理業務は発生頻度がバラバラなため、全体像を把握しないまま部分的に手をつけると優先順位を誤りやすくなります。

棚卸しの際は、次のような視点でチェックすると課題が見えやすくなります。

  • 特定の担当者に偏っている業務はどれか
  • 紙・Excel・メールなど、手段がバラバラで分断されている業務はどれか
  • 転記や二重入力が発生している工程はどこか

こうして業務を可視化することで、どこにボトルネックがあるのかが具体的に見えてきます。棚卸しを飛ばしていきなり方法論に進んでしまうと、本来最も効果の大きい改善点を見落としたまま、目についた業務だけを効率化してしまう恐れがあります。

STEP2 ECRSの原則で「なくす・まとめる・入替える・簡素化する」順に見直す

業務を洗い出したら、次は「見直しの順番」を意識します。ここで役立つのがECRSの原則です。ECRSとは、Eliminate(排除・なくす)、Combine(結合・まとめる)、Rearrange(交換・入替える)、Simplify(簡素化する)の頭文字を取ったフレームワークで、この順序で業務を見直すことが重要とされています。

  • Eliminate(なくす):そもそも不要な作業や、形骸化した承認・確認プロセスがないかを問い直します
  • Combine(まとめる):似た作業や重複している入力・確認をひとつにまとめられないかを検討します
  • Rearrange(入替える):作業の順序や担当を入れ替えることで、待ち時間や手戻りを減らせないかを考えます
  • Simplify(簡素化する):残った作業についても、フォーマットや手順を簡素化できないかを見直します

この順番で見直すメリットは、まず「なくせる作業」から着手できる点にあります。効果の大きい改善から手をつけられるため、無駄な投資を避けながら効率化を進められます。ルールの整理を後回しにしたままツール導入だけを先に進めてしまうと、現場に定着しにくくなる点にも注意が必要です。

なお、この段階で「承認にかかる日数を○日削減する」「データ転記ミスを○割減らす」「月次決算を○日以内に終わらせる」といった具体的なKPIを設定しておくと、後のステップで効果を測定しやすくなります。

STEP3 課題に合った方法・ツールを選定する

棚卸しとECRSによる見直しが済んだら、ようやくツールや方法の選定に入ります。ここで大切なのは、「流行っているから」「他社が使っているから」という理由でツールを選ばないことです。STEP1・STEP2で明らかになった自社固有の課題に対して、どの方法が最も効果的かという順序で検討することが欠かせません。

例えば、紙の書類が多いことが課題であればペーパーレス化やキャッシュレス化、属人化が課題であれば会計ソフトによる標準化、入力作業の多さが課題であればAI-OCRやRPAといったように、課題と手段を対応させて考える必要があります。具体的な方法の内容や特徴については、次章で詳しく解説します。

STEP4 一部の業務からスモールスタートし効果を測定する

方法を選定できたら、全社・全業務でいきなり本格導入するのではなく、一部の業務や部署からスモールスタートすることをおすすめします。効率化への取り組みは、切り替えにともなう一時的な負担を嫌って現状維持にとどまろうとする空気が生まれやすいものです。小さく試して効果を数字で示すことができれば、その空気を動かしやすくなります。

STEP2で設定したKPIをもとに、導入前後でどれだけ作業時間が短縮できたか、ミスがどれだけ減ったかを測定し、効果を確認しながら対象範囲を広げていく進め方が現実的です。この一連の流れ(洗い出し→整理→KPI設定→実施→モニタリング)を繰り返すことで、効率化を一時的な取り組みで終わらせず、継続的な改善サイクルとして定着させられます。

経理業務を効率化する具体的な方法8選

前章で洗い出した業務課題に対して、ここでは実際に導入できる具体的な打ち手を紹介します。自社の課題に合わせて、どの方法から着手するかの参考にしてください。

ペーパーレス化・キャッシュレス化を進める

領収書や請求書を紙のまま扱っていると、印刷・押印・回覧・保管・検索のすべてに時間がかかってしまいます。電子データで受領し、承認から保管までをオンライン上で完結できる体制に変えることで、経理担当者だけでなく申請者や承認者の負担も同時に軽減できます。

あわせて検討したいのが、小口現金の廃止です。小口現金を法人カードやキャッシュレス決済に移行すれば、現金の出納確認や月末の締め作業にかかる工数を大きく圧縮できます。実際に、経費精算システムの導入によって現金精算にまつわる工数が大幅に削減された事例も報告されており(詳細は次章で紹介します)、ペーパーレス化とキャッシュレス化はセットで進めることで効果が出やすい施策といえます。

なお、改正電子帳簿保存法では電子取引における証憑をデータで保管することが求められているため、ペーパーレス化は単なる効率化にとどまらず、法対応の観点からも避けて通れない取り組みになっています。

書類フォーマットの統一と業務の標準化

部署や担当者ごとに経費精算のフォーマットや申請ルールがバラバラだと、経理担当者はその都度確認・修正の手間を強いられます。申請書や請求書のフォーマットを社内で統一し、記入項目や承認フローを標準化することで、誰が処理しても同じ手順で進められる状態を作ることができます。

業務の標準化は、前章で触れた属人化解消にも直結する取り組みです。手順書やチェックリストを整備し、特定の担当者しか分からない「暗黙のルール」を可視化しておくことで、担当者の急な不在時にも業務が滞りにくくなります。まずはExcelのテンプレートを整えるだけでも、二重入力や確認漏れを減らす効果が期待できます。

会計ソフト・経費精算システムを導入する

経費精算をシステム化すれば、申請・承認・データ化・証憑保存までを一か所で管理できるようになります。会計システムと連携させれば、仕訳入力や支払データ作成の手間も併せて削減できます。実際に請求書処理システムを活用したことで、これまで1時間以上かかっていた作業がわずか5分で完了するようになった事例も報告されています。

また、クラウド型の会計ソフトは法改正にも自動でアップデート対応するため、インボイス制度や電子帳簿保存法といった制度変更のたびに自社でルールを見直し、社内周知する手間を減らせる点も大きなメリットです。制度対応の負荷が高まっている現状において、クラウド会計ソフトの導入は経理担当者の負担軽減に直結する選択肢といえます。

AI-OCR・RPAで入力・確認作業を自動化する

AI-OCRは、紙の請求書や領収書をスキャンして文字情報を自動でデータ化する技術です。これをRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と組み合わせることで、書類の読み取りからシステムへの登録までを一気通貫で自動化できます。手入力や転記作業が減れば、月次決算や請求業務にかかる時間の大幅な短縮が期待できます。

自動でデータを取り込んで仕訳候補を作成できるようになると、確認や差し戻しの往復も減り、月次決算の前倒しにもつながります。ただし、AIはすべての判断を肩代わりできるわけではありません。例外処理や税務判断、承認可否、社内規程との整合確認といった部分は、あくまで人が担うことを前提に、AI-OCRやRPAを「担当者の判断を支える道具」として組み込む視点が重要です。

経理アウトソーシング(経理代行)を活用する

社内での効率化に限界を感じる場合は、経理業務そのものを外部に委託する経理アウトソーシング(経理代行)も有効な選択肢です。記帳代行や給与計算、請求書発行、経費精算といった定型業務から、月次決算のとりまとめまで幅広く委託できます。

特に人手不足が深刻な企業や、経理担当者が1人しかいない「ひとり経理」の企業にとっては、担当者の急な休職・退職時にも業務を止めずに継続できる体制を確保できる点が大きな利点です。アウトソーシングは必ずしも業務全体を丸ごと任せる必要はなく、繁忙期のみ、あるいは特定業務のみを部分的に委託する使い方も可能です。自社で完結させることにこだわらず、外部の力を借りる選択肢として検討する価値があります。

経理業務を効率化した成功事例

ここまで紹介してきたペーパーレス化やシステム導入、アウトソーシングといった方法が、実際の企業でどれほどの効果を生んでいるのかを具体的な事例で見ていきましょう。自社の状況に近い事例があれば、着手する際の効果イメージを持ちやすくなります。

経費精算を効率化した事例(神奈川トヨタ自動車株式会社)

神奈川トヨタ自動車株式会社は、営業スタッフを多く抱える組織特有の課題として、毎月およそ5,000枚にのぼる領収書の突合作業に膨大な工数を割いていました。加えて、月末に発生する現金精算業務は担当者にとって心理的な負担が大きく、内部統制の観点からも改善すべき課題を抱えていた状況です。

こうした課題に対し、同社は経費精算システム「TOKIUM経費精算」を導入しました。紙の領収書を電子データとして取り込み、申請から承認、証憑保存までを一元管理できる体制に切り替えたことで、現場の運用は大きく変わりました。

導入後の効果は次のとおりです。

  • 現金精算の件数が約3分の1に減少
  • 扱う領収書の枚数が10分の1以下に減少
  • 全社で経費精算にかかる時間を年間15,000時間削減

領収書を紙のまま処理していた頃は、回収・突合・保管といった一連の作業がすべて経理担当者の手作業に依存していました。電子化によってこの工程が圧縮された結果、経理部門だけでなく、申請する営業スタッフ側の負担も軽減されたと考えられます。多店舗・多人数の営業組織を抱える企業にとって、経費精算のペーパーレス化がいかに大きなインパクトを持つかがわかる事例です。

請求書処理を効率化した事例(TOKIUMインボイス導入)

もう一つの事例は、請求書処理にかかる時間の圧縮です。ある企業では、受け取った請求書の内容確認・データ入力・承認回付といった一連の処理に、月100時間以上を要していました。紙の請求書が届くたびに担当者が目視で確認し、会計システムへ手入力するという流れが、業務全体のボトルネックになっていたと考えられます。

この企業が請求書処理システム「TOKIUMインボイス」を導入した結果、請求書処理にかかる時間は月100時間以上から約2時間へと、実に50分の1にまで短縮されました。

請求書は取引先ごとにフォーマットがばらばらであることが多く、手作業での処理には限界があります。AI-OCRによる読み取りとシステムでの自動仕訳・保存を組み合わせることで、担当者は例外的な確認作業のみに集中できるようになり、月次決算のスピードにも好影響が出やすくなります。

これら2つの事例は、いずれも「紙の書類を電子化し、システムで一元管理する」というシンプルな方向性でありながら、業務量に大きな削減効果をもたらしています。自社の経費精算や請求書処理が同じようなボトルネックを抱えていないか、一度棚卸ししてみる価値があるといえるでしょう。

自社に合う効率化手段の選び方|SaaS・アウトソーシング・RPA・コンサルの使い分け

経理業務の効率化には、SaaS(会計ソフト・経費精算システム)、アウトソーシング、RPA・AI-OCR、コンサルティングという4つの手段がありますが、どれか一つを選べば解決するわけではありません。自社の課題の性質に応じて、これらを組み合わせて使い分ける視点が重要です。

4つの手段の特徴とコスト・スピードの違い

まず、それぞれの手段が持つ特性を整理します。

  • SaaS(会計ソフト・経費精算システム):月額利用料が中心で比較的低コストから始められ、導入から稼働までのスピードも速いのが特徴です。クラウド型であれば法改正にも自動でアップデート対応するため、制度変更のたびに自社で対応する手間を減らせます。ただし、業務フローの整理ができていない状態で導入すると、現場に定着せず確認作業がかえって増えてしまう恐れがあります。
  • RPA・AI-OCR:紙の請求書や領収書をスキャンして自動でデータ化し、システムへの登録までを一気通貫で自動化できる手段です。定型的な入力・転記作業が多い企業ほど効果が出やすい一方、業務ルールが標準化されていないと自動化の設計自体が複雑になり、導入・保守にコストがかかりやすい点は考慮が必要です。
  • 経理アウトソーシング(経理代行):記帳代行や給与計算、請求書発行、経費精算といった定型業務から月次決算のとりまとめまで委託でき、人手不足や「ひとり経理」の企業にとって業務継続性を確保できる有効な手段です。委託費用は発生しますが、採用・教育のコストや属人化のリスクを外部に移すことができ、スピード面でも比較的早く効果を実感しやすい傾向があります。
  • コンサルティング:業務フロー全体の設計や、複数手段を組み合わせた最適化の方向性を示してもらえる手段です。効果が出るまでにはある程度の時間と費用がかかりますが、自社だけでは気づきにくい構造的な課題を整理できる点が強みです。

コストとスピードという軸で見ると、SaaSは「低コスト・即効性」、RPA・AI-OCRは「中コスト・準備期間が必要」、アウトソーシングは「継続コストだが即戦力」、コンサルは「初期投資は大きいが根本解決につながりやすい」という傾向で整理できます。

自社改善・ツール導入が向いているケース

自社で改善を主導し、SaaSやRPA・AI-OCRを中心に据えるべきなのは、次のような状況にある企業です。

  • 経理担当者が複数名在籍しており、業務ルールを整理・標準化するリソースが社内にある
  • 紙の書類や手作業による転記など、定型的で反復性の高い業務が多く自動化の効果を出しやすい
  • 前章で紹介したECRSの原則による見直しを自社で回せる体制がある

このような企業では、まず自社内で業務フローを整理したうえでツールを導入することで、投資対効果を最大化しやすくなります。特に定型業務の割合が高い企業ほど、RPA・AI-OCRによる自動化のメリットを実感しやすい傾向があります。

アウトソーシング・コンサル活用が向いているケース

一方で、次のような状況にある企業は、アウトソーシングやコンサルティングの活用を検討する価値があります。

  • 経理担当者が1〜2名しかおらず、退職・休職時に業務が止まるリスクを抱えている「ひとり経理」体制の企業
  • 業務が属人化しており、社内だけでは標準化や見直しの視点を持ちにくい企業
  • 繁忙期のみ業務量が急増するなど、社内で人員を常時確保するほどではない業務がある企業

アウトソーシングは必ずしも経理業務のすべてを外部に委ねる必要はなく、一部の業務のみ、あるいは繁忙期のみといった部分的な活用も可能です。社内で完結させることにこだわらず、外部に任せる選択肢を柔軟に検討する姿勢が、結果として効率化を前に進めやすくします。また、業務範囲がより広く、基幹システム全体を含めた見直しが必要な場合は、コンサルティングを通じてERP導入など全体最適の方向性を検討するのも一つの手段です。

経理業務を効率化するときの注意点と失敗しやすいパターン

経理業務の効率化は、ツールを導入したり外部に委託したりすればそれで終わりというわけではありません。せっかく仕組みを整えても「現場で使われない」「かえって業務が複雑になった」という失敗に陥るケースは少なくありません。ここでは特に陥りやすい3つの落とし穴を確認しておきます。

目的を決めずにツールを導入しない

「他社が導入しているから」「便利そうだから」という理由だけでツールを選んでしまうと、自社の課題とずれた機能に投資してしまい、結局使われなくなるという失敗につながりやすくなります。

前章で紹介したECRSの原則に沿って業務を整理する際も、ルールが整理されないままシステムだけを導入すると、現場に定着せず確認作業がかえって増えてしまうと指摘されています。ツール導入はあくまで「見直した業務フローを実行するための手段」であり、目的そのものではありません。

導入前には、次のような問いを自問しておくことが有効です。

  • どの業務のどの工程を、どれだけ効率化したいのか
  • その効果はどのような指標(承認日数の短縮、転記ミスの削減率など)で測るのか
  • そのツールは自社の業務フローや既存システムと連携できるのか

目的とゴールを言語化してから手段を選ぶという順番を守ることが、無駄な投資を避ける第一歩です。

現場を巻き込み、小さく始めて効果を確かめる

効率化の取り組みが定着しない大きな要因のひとつに、現場を巻き込まないまま経理部門やシステム担当者だけで進めてしまうことが挙げられます。特にバックオフィス業務は営業のような定量的なKPIが設定しにくく、評価の仕組みがなければ「今のやり方を変えてまで効率化に取り組む人が少なくなる」という課題も指摘されています。

また、切り替えに伴う一時的な負担を嫌って、現状維持にとどまろうとする空気が生まれやすいことも見過ごせません。この空気を動かすには、効果を数字で示しながら、小さく試して見せることが有効とされています。いきなり全社的な業務フローを刷新するのではなく、特定の部署や一部の業務からスモールスタートし、削減できた時間やミスの減少といった効果を数値で共有することで、現場の納得感を得ながら次のステップに進めやすくなります。

なお、AIやRPAを活用する場合も、すべての判断を機械に委ねるのではなく、例外処理や税務判断、承認可否、社内規程との整合確認は人が担うという前提を崩さないことが重要です。AIはあくまで担当者の判断を支える道具として組み込む考え方が示されています。

電子帳簿保存法・インボイス制度への対応を前提にする

効率化を検討する際は、コスト削減や時間短縮といった目先のメリットだけでなく、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応を前提として設計することも欠かせません。改正電子帳簿保存法では、電子取引における証憑はデータでの保管が求められており、ペーパーレス化を進める際にはこの法対応もあわせて進める必要があるとされています。

法改正のたびに業務フローや書式を見直し、社内への周知を行う負担は経理担当者にとって大きな負荷となります。ツールやアウトソーシング先を選定する段階から、法制度への対応状況を確認しておくことで、後から手戻りが発生するリスクを減らすことができます。

まとめ

経理業務の効率化が進まない背景には、紙・ハンコ文化、属人化、二重入力、法改正対応と人手不足という構造的な原因があります。これらに手を打てば、作業時間の短縮やミス削減、コスト圧縮、経営判断のスピード向上といったメリットが得られます。効率化を進める際は、いきなりツール導入から入るのではなく、業務の棚卸し→ECRSの原則による見直し→課題に合った方法・ツールの選定→スモールスタートという順番で進めることが重要です。ペーパーレス化や会計ソフト、AI-OCR・RPA、アウトソーシングといった具体的な方法は、自社の課題に合わせて選び、SaaS・アウトソーシング・RPA・コンサルを組み合わせて使い分ける視点も欠かせません。まずは自社の業務を棚卸しし、目的を明確にしたうえで、小さく試すところから始めてみてはいかがでしょうか。

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