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生成AI文字起こしの完全ガイド|ChatGPT・Gemini・Whisper比較

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株式会社Global Design Factory 代表取締役 高橋 遼

株式会社Global Design Factory 代表取締役

高橋 遼

北海道大学工学部でAIによる自然言語処理を研究。P&Gにてビッグデータ解析・消費者分析を担当した後、伊良コーラのマーケティング責任者を経て、現在は株式会社Global Design Factory代表取締役として、中小企業を中心にAIを活用した業務効率化・自動化を支援。

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生成AI文字起こしの完全ガイド|ChatGPT・Gemini・Whisper比較

会議やインタビューの議事録作成に、毎回1〜2時間もかかっていませんか。ChatGPTやGeminiは便利だと聞くものの、文字起こしにどう使えばよいのか、専用ツールとの違いが分からないという方も多いのではないでしょうか。本記事では、生成AIによる文字起こしの仕組みから、ChatGPT・Gemini・Whisperそれぞれの具体的な操作手順、Notta・toruno・LINE WORKS AiNoteといったビジネス向けツールとの比較、精度を上げるコツ、そして機密情報の学習リスクやハルシネーションへの対策までを一気通貫で解説します。読み終える頃には、自社の業務シーンに合った文字起こし手段を判断できるようになります。

生成AIによる文字起こしとは?従来のAI音声認識との違い

「生成AI 文字起こし」と聞くと、ChatGPTやGeminiに音声ファイルをアップロードするだけで、話した内容がそのままテキストになる便利な機能をイメージする方が多いのではないでしょうか。実際にその通りなのですが、なぜ生成AIが文字起こしをできるのか、従来の音声認識ツールと何が違うのかを理解しておくと、この後紹介する各ツールの得意・不得意が判断しやすくなります。まずは技術的な違いから整理します。

生成AIと従来の音声認識(ASR)の技術的な違い

従来型の音声認識(ASR:Automatic Speech Recognition)は、音声の波形パターンを言葉に変換することに特化した専用エンジンでした。決められた文法・辞書データに沿って「聞こえた音」を「文字」へ機械的に置き換える仕組みで、精度は高いものの、話の要約や意図の解釈までは行えないのが一般的でした。

これに対して生成AIによる文字起こしは、ChatGPTと同じ「Transformer」という基盤技術を土台にしています。たとえばOpenAIが提供する音声認識モデル「Whisper」は、Transformerを搭載することで、単なる音声の文字化にとどまらず、文脈を踏まえた自然な言い回しへの整形や、話の意図を汲んだ要約まで一つのモデルでこなせる点が特徴です。Whisperは98言語の識別・文字起こし・音声の英訳を単一モデルで実行でき、68万時間分もの多言語音声データを学習しているため、高精度な文字起こしが可能になっています。日本語での文字起こし精度は全98言語中6位(5位はドイツ語)に位置し、「単語誤り率(WER)」は5.3%に抑えられているというデータもあります。

つまり従来のASRが「音を文字に変える専門職」だとすれば、生成AIは「音を理解し、意味のある文章として再構成できる万能型の書記」に近い存在といえます。この違いこそが、生成AIによる文字起こしが議事録作成や要約作成まで一気通貫でこなせる理由です。

なぜ今「生成AI」による文字起こしが注目されているのか

生成AIによる文字起こしがこれほど注目される背景には、単に「テキスト化できる」だけでなく、その先の工程まで任せられるようになったことがあります。従来のASRでは文字起こし後に人が読みやすく整え、要点をまとめる作業が必要でしたが、生成AIはその整形・要約まで一括で処理できるため、議事録作成にかかる工数そのものを圧縮できます。

一方で、生成AIならではの注意点も見逃せません。生成AIサービスの多くはクラウド上で動作しており、入力した音声データやテキストが学習データとして利用される場合があります。これにより、会議で扱われる機密情報や個人情報が意図せず外部に流出してしまうリスクが生じる点は、ビジネス利用を検討するうえで押さえておくべきポイントです。このリスクについては、後の章で具体的な事例とあわせて詳しく解説します。

ここまでで、生成AIによる文字起こしが「従来の音声認識+文章理解・要約」というハイブリッドな存在であることをご理解いただけたと思います。次の章では、実際にChatGPT・Gemini・Whisperを使って文字起こしを行う具体的な手順を見ていきます。

生成AIで文字起こしをする3つの方法(ChatGPT・Gemini・Whisper)

生成AIで文字起こしをする代表的な手段は、ChatGPT・Gemini(Google AI Studio)・Whisperの3つです。それぞれ得意な使い方や制限事項が異なるため、自社の利用シーンに合わせて選ぶことが大切です。ここでは専用のビジネスツールではなく、汎用の生成AI・AIモデルに絞って、具体的な操作手順を見ていきます。

ChatGPTで文字起こしする3つの方法

ChatGPTで文字起こしを行う方法は、大きく分けて次の3つです。

  • Record Modeを使う方法
  • 外部SaaSを併用する方法
  • Audio APIを使った一括処理を行う方法

用途によって適切な方法が変わるため、まずはそれぞれの特徴を押さえておきましょう。

Record Modeは、ChatGPTのデスクトップアプリに搭載された録音機能で、会議をそのまま録音しながらメモを自動生成できるのが特徴です。ただし利用にはいくつか制限があります。2026年6月時点でRecord ModeはPlus、Enterprise、Edu、Business、Proの利用者向けに提供されており、対応しているのはmacOSデスクトップアプリのみです。Windows環境やブラウザ版のChatGPTでは利用できないため、社内の利用環境によっては導入できないケースがある点に注意が必要です。

また、OpenAI公式ヘルプセンターによると、Recordの会議セッションの録音時間は1セッションあたり4時間(240分)に制限されています。制限時間を超過すると自動的に録音が停止し、そこまでの内容でメモが生成される仕組みです。長時間のセミナーや複数時間にわたる会議を扱う場合は、途中で分割する運用を想定しておくとよいでしょう。

Record Modeが使えない環境では、外部の文字起こしSaaSでテキスト化したうえで、ChatGPTに整形・要約を任せる方法や、音声データをAudio API経由で一括処理する方法が代替手段になります。API経由の処理はまとまった量の音声を自動化して処理したい場合に向いていますが、開発的な知識がある程度必要になる点は踏まえておく必要があります。

Gemini(Google AI Studio)で文字起こしする手順

Google AI Studioを使った文字起こしは、次の5ステップで行えます。

  1. 音声ファイルを準備する
  2. Google AI Studioを開く
  3. ファイルをアップロードする
  4. プロンプトを入力する
  5. 文章を整える

操作自体は難しくありませんが、扱えるファイルには制限があります。1ファイルあたり最大2GB、同時にアップロードできるのは最大10ファイルまでです。対応形式は、音声であればMP3・WAV・FLAC・OGG・AAC、動画であればMP4・AVI・MOV・WebM・MPEG・WMVなど、主要な形式に幅広く対応しています。会議の録画データや、スマートフォンで撮影したインタビュー動画などもそのまま扱いやすい仕様といえるでしょう。

なお、Google AI Studioは無料で利用しやすい反面、ファイルサイズや実行回数によって処理に失敗することがあります。この点の対処法については、精度向上のコツを扱う後のセクションで改めて紹介します。

Whisper(OpenAI)で文字起こしする方法

Whisperは、OpenAIが提供する音声認識モデルで、ChatGPTと同様に汎用性・理解力に優れた基盤「Transformer」を搭載しています。98言語の識別・文字起こし・音声英訳が単一のモデルで実行できるのが特徴です。68万時間分の多言語音声データを学習しており、精度の高さでも知られています。日本語での文字起こし精度は、large-v2モデルの場合で全98言語中6位(5位のドイツ語に次ぐ位置)となっており、「単語誤り率(WER)」は5.3%に抑えられています。

Whisperの大きな特徴は、利用方法によってコストが大きく変わる点です。

  • ローカル実行:オープンソースとしてGitHubで公開されており、環境さえ整えれば完全無料で利用可能
  • API経由:1分あたり0.006ドルという従量課金

ローカル環境で動かす場合は、ある程度のPCスペックや設定の知識が必要になりますが、コストをかけずに大量の音声データを処理したい場合には有力な選択肢です。一方でAPI経由の利用は、環境構築の手間を省きたい場合や、他システムと連携した自動処理を組みたい場合に向いています。誰でも自由に利用・カスタマイズできるオープンソースである点も、社内システムへの組み込みを検討する企業にとっては魅力といえるでしょう。

これら3つの方法は、いずれも汎用の生成AI・AIモデルを使う手段です。専用の議事録作成ツールとは異なり、セキュリティ設定や話者分離などの機能が標準で備わっていない場合もあるため、業務利用を前提とするなら次に紹介するビジネス向けツールとの比較も踏まえて検討することをおすすめします。

ビジネス向け生成AI文字起こしツール比較(Notta・toruno・LINE WORKS AiNoteほか)

ChatGPTやGemini、Whisperといった汎用の生成AIは、単発の文字起こしであれば十分に実用的です。しかし、会議への自動参加、話者分離、社内ナレッジとしての蓄積・活用まで求めるなら、ビジネス向けに設計された専用ツールのほうが適しています。ここでは代表的な4つのサービスを、機能・実績・セキュリティの観点から見ていきます。

Notta

Nottaは、国内で約300万人、グローバルでは約1,500万人が利用している文字起こし・議事録作成ツールです。売上の約70%は日本国内が占めており、特に法人会員の増加が成長を牽引しています。シリーズAラウンドでは9億9,000万円を調達しており、法人向け需要の拡大を背景に投資が続いている点からも、ビジネス利用における存在感がうかがえます。

日本語・英語を含む58言語に対応しており、会議の議事録作成からインタビュー・取材の記録まで幅広いシーンで活用できます。ITreview上のユーザー満足度は2026年8月時点で4.0と評価されており、実際の導入事例では、Notta導入前は録音を聞き直しながら会議の議事録作成・整形に約1.5〜2時間を費やしていたところ、導入後は会議終了と同時に高精度なテキストとAI要約が出力されるため、人の手による修正・肉付けにかかる時間が大幅に短縮されたと報告されています。

Notta開発元は「多くのヘビーユーザーは、Nottaで文字起こし・要約した後、ChatGPTなど外部AIにアップロードして分析や資料作成を行っている。Nottaは会話の文脈を最も理解している存在だからこそ、その後の工程まで担えると考えた」と開発背景を説明しています。つまりNottaは、汎用生成AIの「前処理」として会話データを整理し、その後の分析・資料作成は外部AIに委ねるという、生成AIとの併用を前提とした設計思想を持つツールといえます。

なお、Zoom・Google Meet・Microsoft Teamsへの自動参加によるリアルタイム文字起こし機能や、複数の議事録を横断活用する機能については後述のシーン別活用法で改めて触れます。

toruno

torunoは、国内で提供されている文字起こし・議事録作成サービスの一つです。会議やインタビューの音声をテキスト化し、業務効率化を図る目的で利用されています。汎用生成AIとの違いとして、業務利用を前提としたインターフェースや運用フローが整えられている点が挙げられます。

なお、torunoの具体的な料金プランや話者分離の定量的な精度データについては、公表情報の確認が及んでいないため、本記事では数値の紹介を控えます。ツール選定の際は、後述する「認識精度」「セキュリティ」「料金」「対応シーン」という共通の観点から、自社の利用シーンに照らして比較検討することをおすすめします。

LINE WORKS AiNote

LINE WORKS AiNoteは、ビジネスチャット「LINE WORKS」と連携する形で提供されている文字起こし機能です。普段の業務で LINE WORKS を利用している企業にとっては、既存のワークフローに自然に組み込める点が特徴といえます。

こちらも料金プランや精度に関する定量データは本セッションでは確認できていないため、断定的な比較は控えます。すでに LINE WORKS を社内コミュニケーション基盤として導入している企業であれば、追加のツール導入・アカウント管理の手間を抑えられる可能性がある、という観点で検討するとよいでしょう。

文字起こしさん

文字起こしさんは、その名の通り文字起こしに特化したサービスです。専用ツールならではのシンプルな操作性を志向している点が、汎用生成AIとの違いとして挙げられます。

このツールについても、詳細な機能仕様や料金プランの数値データは今回確認が取れていません。専用ツールを選ぶ際は、無料トライアルやお試しプランを実際に使ってみて、自社の会議・インタビューの音声でどの程度の精度が出るかを確かめる方法が、最も確実な比較手段になります。

専用ツールを選ぶときの共通の視点

toruno・LINE WORKS AiNote・文字起こしさんのように、公開情報だけでは横並び比較が難しいサービスも少なくありません。そうした場合でも、次の4つの観点を軸に検討すると判断がぶれにくくなります。

  • 認識精度:自社の会議で使われる専門用語や固有名詞をどれだけ正確に拾えるか
  • セキュリティ:入力した音声・テキストが学習データとして扱われないか、法人向けの管理体制があるか
  • 料金:利用人数や会議時間に応じたプランが自社の運用規模に見合っているか
  • 対応シーン:オンライン会議への自動参加、話者分離、多言語対応など、実際に使いたい場面をカバーしているか

汎用生成AIとの使い分けとしては、単発の文字起こしや簡単な要約であればChatGPTやGeminiでも十分ですが、会議への自動参加やチームでの継続的な議事録運用を求めるなら、Nottaのような専用ツールを軸に検討するのが現実的な選択肢になります。

生成AI文字起こしを導入するメリットと注意すべきリスク

生成AIによる文字起こしは、業務効率化という大きなメリットをもたらす一方で、これまでの音声認識ツールにはなかった特有のリスクも抱えています。導入を検討する際は、良い面だけでなく注意点もあわせて理解しておくことが大切です。

メリット:議事録作成の時間を大幅に削減できる

議事録作成における最大の負担は、録音を聞き直しながら文字に起こし、内容を整えるという作業時間の長さです。

AI議事録ツール「Notta」の導入事例では、導入前は会議の議事録を作成・整形するのに、録音を聞き直しながら約1.5〜2時間を費やしていたところ、Notta導入後は会議終了と同時に高精度なテキストとAI要約が出力されるようになり、人の手による修正や肉付けにかかる時間が大幅に短縮されたと報告されています。

こうした効率化が起こる理由は、生成AIが単なる音声のテキスト化だけでなく、以下のような処理までを一気に担えるからです。

  • 発言をそのまま文字にする「文字起こし」
  • 要点をまとめる「要約」
  • テーマごとに内容を整理する「構造化」

これまで人が録音を聞きながら手作業で行っていた工程を、AIが会議終了と同時に自動でこなしてくれるため、担当者は聞き直しや清書に時間を割く必要がなくなります。空いた時間を、本来注力すべき会議内容の検討や次のアクションの準備に充てられる点が、生成AI文字起こし最大の価値といえます。

さらに、Nottaの開発元は「多くのヘビーユーザーは、Nottaで文字起こし・要約した後、ChatGPTなど外部AIにアップロードして分析や資料作成を行っている」と説明しており、文字起こしツールと汎用生成AIを組み合わせることで、議事録作成の先にある資料化・分析までを効率化する使い方も広がっています。

注意点:機密情報の学習リスクとハルシネーション

一方で、生成AIを業務に取り入れる際には、従来の音声認識ツールにはなかった2つのリスクを理解しておく必要があります。

1つ目は、機密情報の学習リスクです。

多くの生成AIサービスはクラウド上で動作しており、入力された情報が学習データとして利用される場合があります。これにより、会議で取り扱われる機密情報や個人情報が外部に流出してしまうリスクが生じます。特に法務、医療、行政など、高い情報管理が求められる業界では、このリスクは深刻な問題となります。

実際に2023年には、ChatGPTを経由して大手企業の機密情報が流出するトラブルが発生しました。社内でChatGPTの利用を許可したところ、従業員が社内機密となっているソースコードや会議の情報をAIに入力していたことが明らかになったという事例です。

このリスクの本質は、一度AIに入力した情報が、AIの学習のためサーバーに保管されてしまう点にあります。つまり、自社の情報が自社の手を離れ、その後の管理や削除ができなくなってしまうのです。会議で扱う内容には顧客情報や未公開の経営判断が含まれることも多いため、「便利だから」という理由だけで無条件に汎用生成AIへ入力するのは避けたほうがよいでしょう。

こうしたリスクへの対策として、法人向けに提供される文字起こしツールでは、入力された会議内容がAIの学習データとして使用されないよう配慮されているケースが増えています。情報セキュリティを重視した設計により、企業内の機密情報や個人情報が外部に流出するリスクを軽減しているのです。実際に、一部の医療機関などでは、クラウド上ではなく端末内に保存されるAI議事録ツール「ScribeAssist」を活用し、生成AIの学習に利用されない仕組みのもとで安心して運用している例もあります。

2つ目は、ハルシネーション(誤変換・誤要約)です。

生成AIは、音声を認識できなかった箇所や聞き取りにくい発言を、文脈から「それらしく」補完してしまうことがあります。これは従来型の音声認識にも見られる誤変換とは異なり、AIが自然な文章を生成しようとする過程で、実際には話されていない内容をもっともらしく作り出してしまう現象です。要約や整形を任せる工程が増えるほど、こうした誤りが紛れ込む余地も大きくなります。

特に、契約条件や数値、固有名詞など、正確性が重視される内容を扱う会議では、AIが出力した文章を鵜呑みにせず、必ず人の目で原音や録音と照らし合わせて確認する工程を挟むことが欠かせません。精度を高めるための具体的な工夫については、次章で詳しく解説します。

文字起こし精度を上げる実践のコツ

ChatGPT・Gemini・Whisper、あるいはNottaのような専用ツールを使っていても、「思ったより誤字が多い」「専門用語が変換されない」と感じた経験がある方は多いのではないでしょうか。生成AIによる文字起こしの精度は、ツール選び以上に「入力データの質」と「指示の出し方」に左右されます。ここでは、今すぐ実践できる2つのポイントを紹介します。

録音環境と話者分離を整える

生成AIの文字起こし精度は、音声そのものの品質に大きく依存します。Whisperのlarge-v2モデルは日本語において単語誤り率(WER)5.3%という高精度を実現していますが、これはあくまでモデル側の性能であり、録音環境が悪ければこの性能は十分に発揮されません。実際、Google AI Studioで文字起こしがうまくいかないケースの多くは、ファイルサイズ(音声の長さ)や一度に処理を頼む作業量の多さが原因とされており、音声を分割してから処理する、プロンプトを分けて依頼するといった工夫が有効です。

精度を上げるために、まず意識したいのが録音時点での対策です。

  • マイクと話者の距離を近づける:会議室の隅で録音するより、各参加者の近くにマイクを置くだけでノイズが減り、認識精度が上がります。
  • 同時発話を避ける:複数人が同時に話すと、AIは音声を正しく分離できず、発言が欠落したり混ざったりしやすくなります。
  • ノイズの少ない環境を選ぶ:空調音や紙をめくる音、外部の騒音なども誤変換の原因になります。
  • 音声ファイルを事前に分割する:長時間の会議は、区切りのよいタイミングで分割してから文字起こしにかけると、処理エラーや精度低下を防ぎやすくなります。

また、複数人が参加する会議やインタビューでは「誰が何を話したか」を区別する話者分離も重要な観点です。汎用の生成AIは話者分離の機能が限定的な場合があるため、話者を明確に区別したい場面では、話者分離機能を備えた専用ツールの利用も選択肢に入れると良いでしょう。専用ツールの機能面の違いについては、前のセクションで紹介したNottaなどの比較を参考にしてください。

音声の準備段階を丁寧に行うことで、最終的な文章の精度は大きく変わります。ツールに文字起こしを依頼する「前」の一手間が、後工程の修正時間を左右すると考えておくとよいでしょう。

プロンプト・カスタム辞書を活用する

もう一つの重要なポイントが、AIへの指示の出し方です。生成AIは従来の音声認識と異なり、文脈理解に基づいて出力を柔軟に調整できるのが強みです。この特性を活かすには、「文字起こしして」という漠然とした指示ではなく、目的や形式を具体的に伝えるプロンプト設計が欠かせません。

例えば、以下のような指示を加えることで出力の質が変わりやすくなります。

  • 話者ラベルの指定:「発言者ごとにA・Bと区別して表記してください」と伝える。
  • 表記ゆれの統一:「敬語表現は統一し、フィラー(えー、あの等)は除去してください」と指示します。
  • 専門用語・固有名詞の事前提示:会社名や製品名、業界用語などをあらかじめプロンプトに含めておくと、誤変換が減りやすくなります。
  • 出力形式の指定:「箇条書きで要点をまとめてください」「時系列で整理してください」など、用途に応じたフォーマットを指定します。

特に社名・製品名・専門用語は、生成AIが一般的な言葉に誤って変換してしまいやすい部分です。事前に単語リストのような形でプロンプトに渡しておく、いわゆる「カスタム辞書」的な使い方をすることで、同じ用語が繰り返し出てくる会議や業界特化のインタビューでも誤変換を抑えやすくなります。

ChatGPTやGeminiのようなチャット形式のツールであれば、こうした指示を対話の中で追加・修正できるのも利点です。一度で完璧な結果を求めるのではなく、出力を確認しながら「この部分をこう直して」と対話的に精度を詰めていく使い方が、生成AIならではの効率的な活用法といえます。

利用シーン別の活用法(会議・インタビュー・セミナー)

ここまでChatGPT・Gemini・Whisperといった生成AIそのものを使う方法と、Notta・toruno・LINE WORKS AiNoteといった専用ツールを比較してきましたが、実際にはシーンによって「どちらを選ぶべきか」が変わります。ここでは代表的な2つの利用シーンを取り上げ、判断材料を整理します。

社内会議・商談の議事録作成

社内会議や商談の議事録作成では、以下の3つの条件を同時に満たす必要があります。

  • リアルタイム性(会議中に自動で記録が進むこと)
  • 話者の発言を区別できること
  • 機密情報を扱う前提でのセキュリティ配慮

この用途に最も相性がよいのは、専用ビジネスツールです。たとえばNottaには、Zoom・Google Meet・Microsoft Teamsの会議に「Notta Bot」を追加するだけで、AIが自動的に録音とリアルタイム文字起こしを行う機能があります。参加者は記録作業に気を取られることなく、会議の中身そのものに集中できる点が大きなメリットです。

一方で、ChatGPTのRecord Modeも会議の音声を記録してメモを生成できますが、2026年6月時点ではPlus・Enterprise・Edu・Business・Proの利用者向けにmacOSデスクトップアプリのみで提供されており、Windows環境やブラウザでは使えません。また録音時間は1セッションあたり4時間(240分)までという制限があるため、長時間の商談や複数部署が参加する会議には向かない場合があります。社内のPC環境やOSがどうなっているかを、まず確認しておくとよいでしょう。

機密情報を扱う社内会議では、法人向けツールが入力データを学習に利用しない配慮をしているかどうかも、選定の重要な軸になります。この点は前のセクションで触れたリスクとあわせて、契約前に必ず確認しておきたいポイントです。

また、複数回の会議を横断して知見を蓄積したい場合は、単発の文字起こしにとどまらない機能が役立ちます。Notta Brainのように、蓄積された会話データを企業内の"知識資産"として活用し、複数の議事録を読み込んでオンボーディング資料などを自動生成できる仕組みも登場しています。単発の議事録作成にとどまらず、社内のナレッジ共有まで見据えるなら、こうした機能の有無も比較材料にするとよいでしょう。

インタビュー・セミナーの書き起こし

インタビュー記事の作成やセミナーの内容を書き起こす場合は、社内会議とは求められる条件が異なります。リアルタイム性よりも、後から音声ファイルを丁寧に処理して、精度の高いテキストに仕上げることが重視されます。

この用途では、Whisperのようなオープンソースの音声認識モデルや、Google AI Studioを使う方法が力を発揮します。Whisperはローカル実行であれば無料で使え、日本語の文字起こし精度もlarge-v2モデルで単語誤り率5.3%と、実用レベルに達しています。録音済みの音声データをまとめて処理したいケースや、コストを抑えたい場合に向いている選択肢です。

Google AI Studioを使う場合は、音声ファイルの準備・アップロード・プロンプト入力・整形という一連の流れで進められますが、1ファイル最大2GB、同時に最大10ファイルまでという制限があります。長時間のセミナー音声は、この制限に引っかかって処理が途中で止まってしまうことがあるため、あらかじめ音声を分割してから読み込ませると、失敗を避けやすくなります。

インタビューやセミナーの書き起こしは、単に文字にするだけでなく、その後の記事化や資料化まで見据えることが多いはずです。Nottaのように、文字起こしと要約まで一括で行い、その結果をさらに外部の生成AIに渡して分析や資料作成に活用する、という使い方をしているユーザーも少なくありません。文字起こしツールと生成AIを組み合わせることで、書き起こしから原稿作成までの一連の作業を、効率よくつなげられます。

まとめ

生成AIによる文字起こしは、従来の音声認識に「文脈理解・要約・整形」までを組み合わせたハイブリッドな技術です。ChatGPT・Gemini・Whisperはそれぞれ制約や得意分野が異なり、単発の文字起こしには十分実用的ですが、会議への自動参加や話者分離、継続的なナレッジ蓄積を求めるなら、Notta・toruno・LINE WORKS AiNoteといった専用ツールの検討が現実的です。導入にあたっては、議事録作成の時間削減という大きなメリットの一方で、機密情報の学習リスクとハルシネーションという生成AI特有の注意点を必ず押さえておく必要があります。まずは自社の会議やインタビューの音声を使い、無料ツールやプロンプトを実際に試しながら、自社に合った運用方法を見極めてみてください。

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