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生成AIの問題点とは?技術・法律・倫理から見る全リスク

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株式会社Global Design Factory 代表取締役 高橋 遼

株式会社Global Design Factory 代表取締役

高橋 遼

北海道大学工学部でAIによる自然言語処理を研究。P&Gにてビッグデータ解析・消費者分析を担当した後、伊良コーラのマーケティング責任者を経て、現在は株式会社Global Design Factory代表取締役として、中小企業を中心にAIを活用した業務効率化・自動化を支援。

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生成AIの問題点とは?技術・法律・倫理から見る全リスク

生成AIの業務活用が急速に広がる一方、「導入しても大丈夫なのか」という不安を抱く企業担当者は少なくありません。ハルシネーションによる誤情報、機密情報の漏洩、著作権侵害、そしてディープフェイクなどの倫理的リスクまで、生成AIには見過ごせない問題点が存在します。本記事では、技術・セキュリティ・法律・倫理という4つの切り口で生成AIの問題点を整理し、サムスン電子の情報漏えい事例やGetty Images対Stability AI訴訟の最新判決など具体的な事例も交えて解説します。あわせて、企業が実務レベルで着手できる対策も紹介しますので、社内でのガイドライン策定や導入判断の材料として活用してください。

生成AIとは何か、なぜ今「問題点」が注目されているのか

生成AI(ジェネレーティブAI)とは、テキスト・画像・音声・プログラムコードなどのコンテンツを、学習したデータのパターンにもとづいて新たに作り出すAI技術を指します。ChatGPTのような文章生成AIや、Stable Diffusionのような画像生成AIが代表例で、業務効率化のツールとして企業・個人の双方で急速に普及しています。

生成AIの普及状況(企業・個人の利用率データ)

総務省「令和7年版情報通信白書」によると、日本企業における生成AIの活用実績は2024年度で49.7%となり、2023年度の42.7%から着実に増加しました。また、生成AIの利用が想定される業務のうち、実際に何らかの業務で活用していると回答した企業は55.2%にのぼります。

個人利用も大きく伸びています。2024年度に「生成AIを使ったことがある」と回答した日本の個人は26.7%で、前年度の約9.1%から大幅に増加しました(インソースコラム、総務省「令和7年版情報通信白書」)。ただしこの数値は、米国68.8%、中国81.2%、ドイツ59.2%といった海外主要国と比較すると依然低い水準にあります。

市場規模の面でも成長が顕著です。富士キメラ総研の調査では、国内の生成AI市場は2024年度に前年度比3.0倍の4,291億円が見込まれ、2028年度には1兆7,397億円(2023年度比12.3倍)に達すると予測されています。

便利さの裏で顕在化するリスクの全体像

一方で、導入が進むほどリスクへの懸念も浮かび上がっています。総務省の調査では、日本企業が生成AI導入にあたって抱える懸念事項として「効果的な活用方法がわからない」が最多で、次いで「社内情報の漏えい等のセキュリティリスク」「ランニングコストがかかる」「初期コストがかかる」が挙げられています。

生成AIが抱える問題点は、大きく分けると技術的な問題点(誤情報の生成や判断根拠の不透明さ)、セキュリティ・法律的な問題点(情報漏洩や著作権侵害)、そして社会的・倫理的な問題点(バイアスやディープフェイクによる悪用、雇用への影響)の3つの切り口で整理できます。次章以降では、これらのリスクを一つずつ具体的に解説していきます。

生成AIが抱える技術的な問題点

生成AIは膨大なデータを学習し、人間のように自然な文章や画像を作り出せる一方で、その仕組み自体に内在する技術的な限界があります。ここでは、生成AIの出力そのものの正確さや説明可能性に関わる3つの問題点を整理します。

ハルシネーション(誤情報生成)とその影響

生成AIの技術的な問題点として最も広く知られているのが「ハルシネーション」です。ハルシネーションとは、AIが学習データの偏りや誤りを反映し、事実に基づかない情報や存在しない事柄をあたかも真実のように生成してしまう現象を指します。

生成AIは統計的なパターンに基づいて「最もらしい」回答を組み立てる仕組みであり、必ずしも正確性を検証しているわけではありません。そのため、次のような場面で問題が顕在化しやすくなります。

  • 存在しない論文や統計データを、実在するかのように提示してしまう
  • 人物や企業の経歴・沿革について、事実と異なる情報を生成してしまう
  • 専門的な法律・医療分野の質問に対して、根拠のない回答を自信を持って返してしまう

こうした誤情報は一見流暢で説得力があるため、利用者が気づかずに業務資料や顧客対応にそのまま使ってしまうリスクがあります。企業がビジネス上の意思決定や外部への情報発信に生成AIの出力を用いる場合は、必ず人間による事実確認(ファクトチェック)の工程を挟むことが欠かせません。

ブラックボックス性と説明可能性の欠如

もう一つの技術的な課題が「ブラックボックス性」です。生成AIの内部処理は非常に複雑な計算構造で成り立っており、なぜその出力が生成されたのかという判断過程を人間が直感的に理解することが難しくなっています。

この説明可能性の欠如は、以下のような場面で実務上の支障につながります。

  • 生成された回答や判断の根拠を第三者やコンプライアンス部門に説明できない
  • 誤った出力が発生した際に、原因を特定して再発防止策を講じることが難しい
  • 採用選考や与信判断など、公平性が求められる業務にAIを活用する際に、判断基準の透明性を確保しづらい

ブラックボックス性は、生成AIが「便利だが検証しにくい」ツールであることを示す本質的な特徴といえます。特に説明責任が重視される業務領域では、AIの出力をそのまま最終判断として採用するのではなく、あくまで参考情報として位置づける運用が求められます。

出力の再現性・品質の不安定さ

生成AIには、同じ質問や指示(プロンプト)を入力しても、実行するたびに異なる回答が返ってくるという特性もあります。これは生成AIが確率的な仕組みで文章や画像を組み立てているためで、一定のばらつきが生じることは避けられません。

この再現性の低さは、次のような課題を生みます。

  • 業務フローに生成AIを組み込んでも、出力品質が一定にならず品質管理が難しい
  • 検証時に「良い結果」が出ても、本番運用で同じ精度が保証されない
  • プロンプトのわずかな違いによって、回答の方向性や正確性が大きく変わってしまう

こうした出力の不安定さは、ハルシネーションやブラックボックス性とも密接に関わっており、生成AIを業務プロセスに組み込む際には、単発の検証結果だけで判断せず、継続的な品質チェックの体制を前提に導入を検討する必要があります。

情報漏洩・セキュリティに関する問題点

生成AIの技術的な限界に加えて、企業が最も警戒すべきなのが情報漏洩・セキュリティに関する問題点です。実際、総務省「令和7年版情報通信白書」でも、日本企業が生成AI導入時に懸念する事項として「社内情報の漏えい等のセキュリティリスク」が上位に挙げられています。ここでは、機密情報や個人情報がどのような仕組みで漏えいするのか、実際の事例、そして法律上のリスクを整理します。

機密情報・個人情報が漏えいする仕組み

生成AIチャットサービスの多くは、ユーザーが入力したテキストをサービス改善やモデルの再学習に利用する仕組みを持っています。そのため、業務でのちょっとした使い方が漏えいにつながるケースがあります。

  • 社内の議事録や企画書をそのまま貼り付けて要約させる
  • 顧客の氏名・連絡先などが含まれたデータを分析目的で入力する
  • プログラムのエラー修正のためにソースコードをそのまま入力する

これらの操作によって入力された情報は、サービス提供事業者のサーバーに保存され、設定によっては別のユーザーへの回答生成に利用されたり、事業者内部で閲覧されたりする可能性があります。利用者が「気軽に使える」と感じるほど、機密情報や個人情報が意図せず社外に渡ってしまうリスクが高まる点が、このセキュリティ問題の本質的な構造です。

実際に発生した情報漏えい事例(サムスン電子)

情報漏えいのリスクを象徴する事例として知られているのが、サムスン電子で発生した機密情報漏えいです。同社では従業員がエラー修正のために機密ソースコードをChatGPTに入力した結果、社外秘情報が流出しました(Forbes JAPAN、デイライト法律事務所)。この一件を受け、サムスン電子は社内でのChatGPT利用を禁止する対応に踏み切っています。

さらに、韓国の経済メディアEconomistの報道によれば、サムスン電子がChatGPTの社内利用を許可した後、少なくとも3件の機密情報漏えい事案が確認されたとされています(PC Watch)。単発の事故ではなく、利用を許可した期間中に複数回発生していたという点は、生成AIの利用ルールを整備しないまま現場に委ねることの危険性を示す事例として重要です。

この事例から読み取れるのは、悪意のある操作をしていなくても、日常的な業務効率化の延長線上で機密情報が漏えいしてしまうという点です。従業員一人ひとりの善意や注意力だけに依存した運用は、限界があると言えます。

個人情報保護法上のリスク

機密情報の漏えいは企業のレピュテーションや競争力に直結する問題ですが、個人情報を生成AIに入力する行為には、法律上のリスクも伴います。

デイライト法律事務所の解説によれば、AIへの個人情報の入力は、個人情報保護法上の第三者提供に該当する可能性があります。生成AIサービスの提供事業者は、入力されたデータを保存・処理する立場にあるため、本人の同意を得ずに個人情報を入力する行為は、同意のない第三者提供として同法に違反する可能性があるという点に注意が必要です。

顧客リストやアンケート回答、問い合わせ履歴といった個人情報を含むデータを、要約や分析のために気軽に生成AIへ入力してしまうケースは少なくありません。しかし、そこに本人の同意がない場合、企業は法的リスクを抱えることになります。次章で扱う著作権上の問題点とあわせて、入力データそのものの取り扱いをどう管理するかが、生成AI活用における重要な論点になります。

著作権・知的財産権に関する問題点

生成AIの問題点として避けて通れないのが、著作権・知的財産権に関するリスクです。生成AIは「学習」「生成」「利用」という3つの段階を経ますが、それぞれの段階で著作権侵害の可能性が指摘されています。ここでは法的根拠と国内外の訴訟事例をもとに、具体的にどのようなリスクが存在するのかを整理します。

学習データの著作権侵害リスクと著作権法30条の4

生成AIは大量のテキストや画像データを学習することで、文章や画像を生成する能力を獲得します。この学習段階で他者の著作物を無断利用しているのではないか、という点が最初の論点です。

日本では著作権法30条の4により、「情報解析」を目的とする場合は、原則として著作権者の許諾なく著作物を利用できると規定されています。生成AIの学習データ収集も、この情報解析に該当すると考えられており、日本国内では比較的AI開発に有利な法制度と評価されています。

ただし、この規定には「著作権者の利益を不当に害する場合」には適用されないという例外があります。つまり、学習利用であっても無制限に許されるわけではなく、著作権者の利益をどこまで侵害しているかがケースごとに問われる可能性があるのです。この線引きの曖昧さこそが、企業が生成AIを業務利用する際に慎重な判断を求められる理由といえます。

生成物の著作権侵害リスクと国内外の訴訟事例

学習段階のリスクに加えて、生成AIが出力したコンテンツ自体が既存の著作物と類似してしまう「生成段階」のリスクも重大な問題です。この論点をめぐっては、国内外で具体的な訴訟が相次いでいます。

  • NYT対OpenAI・マイクロソフト:2023年、米ニューヨーク・タイムズはOpenAIとマイクロソフトを著作権侵害で提訴しました。自社記事が無断でAIの学習データに利用されたと主張し、損害額を数千億円規模と試算しています。2025年6月には、ユーザーが削除したChatGPTの会話データを保存するようOpenAIに裁判所命令が下り、OpenAI側は控訴する方針を示しました。
  • Getty Images対Stability AI:2023年、画像ストックサービスのGetty Imagesは、画像生成AI「Stable Diffusion」を開発するStability AIを著作権侵害で提訴しました。1,200万枚以上の画像を無断で学習データに利用したとする主張でしたが、2025年11月4日、英高等法院はGetty Images側の著作権侵害の主張の大部分を棄却しました。一方で、Stable Diffusionのユーザーが生成した画像にGetty Imagesのウォーターマークが含まれていた点については、商標権侵害を部分的に認めています。この判決は、著作権侵害と商標権侵害を分けて判断した点で、今後の生成AI訴訟の判断基準に影響を与える可能性があります。
  • 中国のウルトラマン画像訴訟:2024年、中国の広州インターネット裁判所は、AIが生成したウルトラマン画像の著作権侵害について、生成AIサービス提供事業者の責任を認める判決を下しました。学習・生成の主体が事業者である以上、その責任も事業者側にあるという考え方が示された事例です。

これらの訴訟は国や裁判所によって判断が分かれており、生成AIの著作権問題に関する世界共通のルールはまだ確立されていないのが実情です。企業として生成AIを利用する際は、生成物が既存の著作物と類似していないかを常に確認する姿勢が求められます。

業界団体による権利保護の動き

権利者側の動きも活発化しています。2025年10月には、スタジオジブリや任天堂を含む100社以上が加盟するコンテンツ海外流通促進機構(CODA)が、OpenAIに対して要請書を提出しました。クリエイティブ業界がAI開発企業に直接働きかける動きは、今後さらに広がっていくと考えられます。

企業が生成AIを業務活用する際は、こうした業界団体の動向や訴訟の行方を注視しつつ、生成物の利用範囲や公開方法についても社内でルールを設けておくことが重要です。

倫理的・社会的な問題点

生成AIの問題点は、誤情報の生成や情報漏洩といった技術・セキュリティ面だけにとどまりません。社会全体に影響を及ぼす倫理的な課題も見過ごせないポイントです。ここではバイアス、ディープフェイク、雇用構造という3つの観点から整理します。

バイアス・差別的表現が生まれる仕組み

生成AIは、インターネット上に存在する大量のテキストや画像データを学習して出力を生成する仕組みを持っています。そのため、学習データそのものに社会的な偏りや差別的な表現が含まれていれば、生成AIの出力にもその偏りがそのまま反映されてしまいます。

例えば、特定の性別・国籍・職業に対して偏ったイメージを結びつけて生成してしまうケースは、代表的なバイアスの一例として指摘されています。これは開発者が意図的に差別的な設計をしているわけではなく、学習データに内在する社会的な偏見が、AIというフィルターを通して増幅・再生産されてしまう点が問題の本質です。

このようなバイアスは、企業が生成AIを人事評価や採用選考、マーケティング施策などに活用する際に、意図せず不公平な判断や表現を生み出すリスクにつながります。技術的な問題点の章で触れたブラックボックス性とも関連しますが、「なぜその出力になったのか」を説明しづらいこと自体が、バイアスの発見や修正を難しくしている面もあります。

ディープフェイクによる詐欺・偽情報拡散の実態

生成AIによって作られる偽の画像・音声・動画である「ディープフェイク」は、詐欺や偽情報拡散の手段として悪用が拡大している分野です。

Surfshark社の調査によれば、2025年のディープフェイク詐欺による世界の被害総額は11億ドル(約1,700億円)超に達しているとされています。日本国内でも、有名人のディープフェイク動画を使った投資勧誘詐欺が確認されており、2025年には約150名が被害に遭い、被害総額は約2億円に上った事例が報告されています。Forbes JAPANの記事では、ディープフェイクを使った詐欺の平均被害額は11万円超で、若者が標的になりやすい実態も指摘されています。

さらに深刻なのは、性的な意味合いを含むディープフェイクの被害です。警察庁によると、生成AI等で作られた性的ディープフェイクについて、2025年1〜9月に18歳未満からの被害相談が79件あり、加害者の半数超が「同じ学校の児童・生徒」だったことが公表されています。この事実は、ディープフェイクが遠い誰かの問題ではなく、身近な人間関係の中でも起こり得る問題であることを示しています。

企業活動においても、経営者や有名人の顔・声を模したディープフェイクによる詐欺的な資金要求やフェイクニュースの拡散は、ブランドイメージや取引先との信頼関係を損なうリスクとなり得ます。

雇用構造への影響

生成AIは文章作成・翻訳・プログラミング・データ分析など様々なタスクを自動化できる一方、定型的な作業やルーティンワークが多い職種ほどAIによる代替が進みやすいと考えられており、雇用減少の可能性が指摘されています。

一方で、生成AIの普及はAI技術の開発・運用に関わるエンジニアやデータサイエンティストなど、新しい職種の需要を高めると予想されています。つまり生成AIの雇用への影響は、単純な「仕事が減る/増える」という二元論ではなく、業務内容や求められるスキルセットそのものが変化していくプロセスとして捉える必要があります。

企業にとっては、既存業務の一部を生成AIに置き換えつつ、従業員がAIを使いこなすスキルを獲得できるよう支援していく視点が、社会的な信頼を保ちながら生成AIを活用するうえで欠かせない要素になってきます。

企業が講じるべき対策とリスクマネジメント

ここまで見てきた技術的な限界、情報漏えいリスク、著作権侵害の可能性、そして倫理的・社会的な問題は、いずれも「生成AIを使わない」という選択では解決できません。総務省「令和7年版情報通信白書」によれば、日本企業における生成AIの活用実績は2024年度で49.7%に達し、前年度の42.7%から着実に増加しています。もはや生成AIの活用は競争力を左右する要素になっており、問題点を正しく理解した上で「どう安全に使うか」を設計することが企業に求められています。

同白書では、生成AI導入における懸念事項として「効果的な活用方法がわからない」に次いで「社内情報の漏えい等のセキュリティリスク」が挙げられています。この結果は、多くの企業がリスクへの対策を講じられずに導入を躊躇している実態を示しているといえるでしょう。以下では、実務レベルで着手できる4つの対策を整理します。

利用ガイドラインの策定

最初に取り組むべきは、生成AIの利用ルールを明文化したガイドラインの策定です。ガイドラインがない状態での利用は、サムスン電子で起きたような機密情報の入力ミスを招きやすくなります。策定にあたっては、少なくとも次の項目を盛り込むことが望ましいでしょう。

  • 入力してよい情報・入力を禁止する情報の範囲(機密情報、個人情報、顧客データなど)
  • 生成物の著作権・商標権に関する社内チェック体制
  • ハルシネーションを前提とした「生成物は必ず人間が事実確認する」というルール
  • 利用してよいツール・サービスの範囲と、私的な無料版ツールの利用制限
  • 違反時の報告・対応フロー

ガイドラインは一度作れば終わりではなく、法律や社会情勢の変化、社内での利用実態に合わせて継続的に更新していく前提で運用することが重要です。

技術的セキュリティ対策

ガイドラインという「ルール」だけでは、うっかりミスや悪意ある持ち出しを完全には防げません。技術面での対策を組み合わせることで、情報漏えいのリスクを下げることができます。

  • 機密情報・個人情報を自動検知してAIへの入力をブロックする仕組みの導入
  • 社内専用環境やセキュリティが確保された法人向けプランの利用(学習データとして再利用されない設定の確認を含む)
  • アクセス権限の管理と、利用ログの記録・保存
  • 生成物に対するウォーターマークや出典表示の仕組みの検討

特に個人情報については、AIへの入力が個人情報保護法上の第三者提供に該当する可能性がある点を踏まえ、本人の同意が取れない情報は入力そのものを技術的に遮断する仕組みを検討すべきでしょう。

従業員教育とリテラシー向上

ガイドラインと技術的対策を整えても、それを使う従業員一人ひとりのリテラシーが不足していれば、リスクは残り続けます。生成AIの問題点――ハルシネーション、機密情報漏えい、著作権侵害、バイアスやディープフェイクの悪用可能性――を、部門を問わず全社員が最低限理解している状態を目指す教育が必要です。

  • 入社時研修・定期研修への生成AI利用ルールの組み込み
  • 実際の漏えい事例や訴訟事例を用いたケーススタディの共有
  • 「生成物をそのまま鵜呑みにしない」「必ずファクトチェックする」姿勢の徹底
  • 現場からの疑問・相談を受け付ける窓口の設置

教育は一度きりの座学で終わらせず、実際にツールを使う中で生じた疑問や失敗を組織全体で共有し、次のルール改善につなげていく循環を作ることが望ましいでしょう。

継続的なモニタリングと見直し

生成AIを取り巻く環境は、法律・技術・社会的な受容度のいずれも変化のスピードが速い分野です。Getty ImagesとStability AIの訴訟のように、判決内容が数年単位で変わっていくケースもあり、一度定めたガイドラインや対策が数年後には陳腐化してしまう可能性があります。

  • 定期的な利用実態の棚卸しとリスクアセスメントの実施
  • 国内外の訴訟・法改正・業界団体の動向(CODAの要請など)の継続的な情報収集
  • インシデント発生時の振り返りとガイドラインへの反映
  • 経営層・法務・情報システム部門が連携したレビュー体制の構築

ガイドライン策定、技術的対策、従業員教育、モニタリングという4つの取り組みは、それぞれが独立したものではなく、相互に補完し合う一つのリスクマネジメント体系として運用することが、生成AIの恩恵を安全に受け取るための現実的なアプローチといえるでしょう。

まとめ

生成AIの問題点は、ハルシネーションやブラックボックス性といった技術的な限界、機密情報・個人情報の漏洩というセキュリティリスク、学習・生成段階における著作権侵害の可能性、そしてバイアスやディープフェイクによる社会的な悪用まで多岐にわたります。サムスン電子の情報漏えいや、Getty Images対Stability AI訴訟の2025年判決などの実例は、これらのリスクが決して他人事ではないことを示しています。一方で、企業の生成AI活用実績は年々増加しており、「使わない」という選択は現実的ではありません。まずは自社の利用実態を棚卸しし、ガイドライン策定・技術的対策・従業員教育・継続的なモニタリングという4つの取り組みから、着手できるものを一つずつ始めてみてください。

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