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生成的人工知能とは?仕組みと活用・リスクの全体像

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株式会社Global Design Factory 代表取締役 高橋 遼

株式会社Global Design Factory 代表取締役

高橋 遼

北海道大学工学部でAIによる自然言語処理を研究。P&Gにてビッグデータ解析・消費者分析を担当した後、伊良コーラのマーケティング責任者を経て、現在は株式会社Global Design Factory代表取締役として、中小企業を中心にAIを活用した業務効率化・自動化を支援。

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生成的人工知能とは?仕組みと活用・リスクの全体像

「生成的人工知能」という言葉を耳にする機会は増えたものの、従来のAIとの違いや、GAN・VAE・拡散モデル・Transformerといった技術の仕組みまで説明できる人は多くありません。特に企画やマーケティング、情シス部門で導入検討を任された方にとっては、社内説明や上司への報告に耐えられるだけの正確な理解が求められます。本記事では、生成的人工知能の定義から従来型AIとの違い、GAN・VAEなどの技術的な仕組み、テキスト・画像・音声・動画といった具体的にできること、金融・製造業などの活用事例、そして著作権や情報漏洩といったリスクと法規制の動向までを体系的に整理しました。読み終える頃には、自社での活用イメージと注意すべきポイントの両方が見えてくるはずです。

生成的人工知能(生成AI)とは?定義と従来のAIとの違い

生成的人工知能の基本的な定義

「生成的人工知能」とは、文章や画像などの入力(プロンプト)に対して、テキストや画像、音声、動画といった新しいコンテンツを応答として作り出す人工知能システムの一種を指します。日本語では「生成AI」、英語由来のカタカナ表記では「ジェネレーティブAI」「ジェネラティブAI」とも呼ばれますが、いずれも同じ概念を指す言葉と理解しておけば問題ありません。Wikipedia「生成的人工知能」でも、生成的人工知能は入力に応じてテキストやメディアを生成するAIシステムと定義されています。

IT用語辞典のe-Wordsも同様に、生成AIを「機械学習技術を応用したAIシステムの一種で、文章や画像、音声、動画、プログラムコードなど、まとまった量の新しい情報を生み出すことができるもの」と説明しています(出典: e-Words「生成AI」)。ポイントは「まとまった量の新しい情報」を生み出す点にあります。単に既存データの中から答えを検索したり分類したりするのではなく、学習データには存在しない、まったく新しいアウトプットを作り出せることが、生成的人工知能という言葉の核心です。

米AWSの解説では、生成AI(生成人工知能)は「会話、ストーリー、画像、動画、音楽などの新しいコンテンツやアイデアを作成できるAI」であり、人間の言語だけでなく、プログラミング言語や化学、生物学といった複雑な主題まで学習できる点が特徴とされています(出典: AWS「生成AIとは何ですか?」)。つまり生成的人工知能は、テキストや画像のような身近な分野に限らず、専門性の高い領域にも応用できる汎用性の高い技術だと言えます。

なお、e-Wordsでは入力できる情報の種類による区分にも触れています。文字や画像など一種類の情報の入力にのみ対応するものを「ユニモーダル」、複数種類の情報の入力に対応するものを「マルチモーダル」と呼びます。この違いは、後述する「生成的人工知能でできること」を理解するうえでの前提知識になりますので、ここで押さえておくとスムーズです。

従来のAI(識別系AI)との違い

生成的人工知能を正しく理解するうえで欠かせないのが、従来型のAI(識別系AI)との違いを整理することです。AWSは、人工知能とは「機械をより人間らしくする」という広い概念であり、生成AIはその中でも「有意義かつインテリジェントな新しいコンテンツを生成する」サブセットにあたると説明しています(出典: AWS「生成AIとは何ですか?」)。この整理をもとに、両者の役割の違いを次のように言い換えると分かりやすくなります。

  • 従来型AI(識別・予測系AI):与えられたデータを分類・識別したり、数値を予測したりすることが主な役割です。例えば、画像に写っているものが「猫」か「犬」かを判定する、購買履歴から解約しそうな顧客を予測する、といったタスクが該当します。答えはあらかじめ存在する選択肢や数値の範囲の中から導き出されます。
  • 生成的人工知能(生成AI):入力に応じて、学習データには存在しない新しいコンテンツそのものを作り出すことが役割です。文章の要約や新規作成、画像やイラストの生成、コードの自動生成などが該当し、出力自体が「創作物」に近い性質を持ちます。

この違いをひとことで言えば、従来型AIが「正解を当てるAI」であるのに対し、生成的人工知能は「何かを作り出すAI」であるという点に集約されます。もちろん、生成的人工知能も内部的には統計的なパターン学習を土台にしており、魔法のように無から何かを生み出しているわけではありません。学習データに含まれる規則性や構造を捉え、それを踏まえて新しいデータを組み立てているにすぎません。具体的にどのような仕組みでこの「新しいデータの組み立て」が行われているかについては、後述するGANや拡散モデル、Transformerといった技術の解説(H2-3)で詳しく取り上げます。

ビジネスの現場で生成AIの導入を検討する際は、まず「識別・予測をしたいのか」「新しいコンテンツを作りたいのか」という目的の切り分けから始めると、必要な技術やツールの選定がぶれにくくなります。この視点は、後のセクションで紹介する活用事例やリスクの整理にもつながる基本の考え方です。

生成的人工知能の歴史|VAE・GANからTransformer、ChatGPTの登場まで

生成的人工知能は、ある日突然登場した技術ではありません。ディープラーニングの基礎研究の積み重ねの上に、いくつかの技術的なブレークスルーが連続して起こり、現在の姿へとつながっています。ここでは「いつ・何が起きたのか」という時系列に絞って、生成AIの発展の流れを整理します。個々のモデルの仕組みの詳細は後述のセクションに譲ります。

生成的モデルの登場(2014年〜)とTransformerの誕生

生成AIの歴史における大きな転換点のひとつが、2014年です。Wikipedia「生成的人工知能」によると、この年に変分オートエンコーダ(VAE)や敵対的生成ネットワーク(GAN)といった技術の進歩により、画像のような複雑なデータの生成的モデルを学習し、実際に生成することができる実用的なディープニューラルネットワークが登場しました。それまでのAIは「与えられたデータを分類・識別する」ことが主な役割でしたが、この時期を境に「学習したデータの特徴から、まったく新しいデータを作り出す」というアプローチが実用段階に入ったといえます。

続く転機は2017年です。同じくWikipediaの解説によれば、Transformerと呼ばれるニューラルネットワークの構造が発表されたことで、より大規模な生成的モデルの実現が可能になりました。Transformerは、文章中の離れた単語同士の関係性も効率よく学習できる仕組みを持っており、これが後の大規模言語モデル(LLM)開発の土台となります。

そしてTransformerの登場からわずか1年後の2018年、最初の生成的事前学習トランスフォーマー(GPT)が開発されました。翌2019年にはGPT-2が発表され、教師なし学習によって獲得した能力を、文章生成をはじめとする多くの異なるタスクへ汎化できることが実証されています。この「ひとつのモデルが幅広いタスクに対応できる」という性質は、のちに「基盤モデル」と呼ばれる考え方へとつながっていきます。

つまり、2014年のVAE・GANによる「生成」という発想の実用化から、2017年のTransformerによる「大規模化」への道筋、そして2018〜2019年のGPTシリーズによる「汎用性の獲得」という3つのステップが、現在の生成AIの技術的な骨格を形づくったといえます。

ChatGPT登場と生成AIの商用普及(2022年〜)

技術的な土台が整った後、生成AIが社会に広く浸透するきっかけとなったのが2022年です。AWSの解説ページでは、生成AIは特にGANやTransformerなどのモデルによる深層学習の進歩によって2010年代後半に登場し、クラウドコンピューティングの進歩によって商業的に実現可能になり、2022年から一般に使用できるようになったと説明されています。

この時期を象徴する存在が、OpenAIがGPT-3やGPT-4といった大規模言語モデルを用いて構築したチャットボット「ChatGPT」です。Wikipediaでも著名な生成AIシステムの例として、ChatGPTのほか、その派生形であるBing Chat、GoogleがLaMDA基盤モデル上に構築したBardなどが挙げられています。テキスト以外の領域でも、Stable DiffusionやDALL-Eといった画像生成AIが同時期に注目を集め、生成AIは一部の研究者だけのものから、誰もが日常的に触れるツールへと一気に立場を変えました。

さらに2025年には、生成AI検索がMITの発表した世界のブレークスルー技術ランキングで2位にランクインし、従来型のGoogle検索が生成AIによる検索へ置き換わっていくとの予測も示されています。VAEやGANによる「生成」という着想の登場からわずか10年ほどで、生成AIは研究段階の技術から、検索や情報収集のあり方そのものを変えうる存在へと急速に発展してきたことがわかります。

生成的人工知能の仕組み|GAN・VAE・拡散モデル・Transformerを解説

生成的人工知能は、ひとつの万能なアルゴリズムで動いているわけではありません。実際には、GAN・VAE・拡散モデル・Transformerといった複数の機械学習モデルが、それぞれ異なる原理でデータの「生成」を実現しています。Wikipedia「生成的人工知能」によると、生成AIシステムは教師なしまたは自己教師ありの機械学習をデータセットに適用することで構築されます。つまり「正解ラベルを人間が与えなくても、データそのものの規則性からパターンを学び取る」という点が、これらのモデルに共通する土台になっています。ここでは、代表的な4つの技術を「何のために生まれ、何が得意なのか」という観点で整理します。

敵対的生成ネットワーク(GAN)

GAN(Generative Adversarial Network)は、2014年に登場した生成AIの初期の代表格です。仕組みをひとことで言うと「偽物を作る生成器」と「本物か偽物かを見抜く識別器」を、互いに競い合わせながら鍛えるという発想のモデルです。

  • 生成器は、本物そっくりの画像やデータを作り出そうとします。
  • 識別器は、それが本物か生成器が作った偽物かを判定しようとします。
  • この2つが「だまそうとする側」と「見破ろうとする側」として競争を繰り返すことで、生成器は次第に本物と見分けがつかないレベルの出力を作れるようになります。

この「敵対的(adversarial)」な学習プロセスこそがGANの名前の由来であり、写真のようにリアルな画像生成や、顔画像の合成などで力を発揮してきました。前セクションで触れたとおり、GANはVAEと並んで2014年ごろに登場し、画像のような複雑なデータを扱う実用的なディープニューラルネットワークの先駆けとなった技術です(出典: Wikipedia)。

変分オートエンコーダー(VAE)と拡散モデル

VAE(変分オートエンコーダー)は、GANと同じく2014年前後に注目を集めた技術ですが、アプローチはやや異なります。一般に、データを一度「圧縮された特徴表現」に変換し、その表現から元のデータに近いものを再構成する仕組みを学習することで、新しいデータを生成できるようになる、という考え方に基づくモデルとして知られています。GANが「競争によってリアルさを追求する」のに対し、VAEは「データの内部構造を捉え、そこから多様なバリエーションを生み出す」ことに強みがあるとされています。

さらに近年主流になっているのが拡散モデルです。画像に少しずつノイズを加えて元の情報を崩し、その逆の手順(ノイズを取り除いていく過程)を学習することで、ノイズだけの状態から鮮明な画像を生成できるようにする、という考え方が一般的に知られています。この拡散モデルの登場によって、画像生成AIの表現力と安定性は大きく向上したといわれており、現在の高精細な画像生成サービスの多くがこの系統の技術を採用しています。具体的なサービス名や活用例は、次のセクションで詳しく紹介します。

Transformerと大規模言語モデル(LLM)・基盤モデル

生成AIの発展を語るうえで欠かせないのが、2017年に登場したTransformerというニューラルネットワークの構造です。Wikipediaによれば、Transformerネットワークはより大規模な生成的モデルの実現を可能にし、これをきっかけに2018年には最初の生成的事前学習トランスフォーマー(GPT)が開発されました。文章を単語の並びとして捉え、単語同士の関連性(どの単語がどの単語と強く結びついているか)を効率的に学習できる仕組みが、長い文章でも文脈を保ったまま自然な文章を生成できる性能につながっています。

この Transformer をベースに、膨大なテキストデータで訓練された大規模言語モデル(LLM)が、現在の対話型AIの中核を担っています。Wikipediaでは、テキスト分野で単語や単語トークンを使って訓練された生成AIシステムの例として、GPT-3、LaMDA、LLaMA、BLOOM、GPT-4などが挙げられており、これらは自然言語処理・機械翻訳・自然言語生成が可能で、他のタスクの基盤モデルとしても使われるとされています。

ここで押さえておきたいのが「基盤モデル」という考え方です。AWS公式ページは、基盤モデルを「幅広いテキストおよび画像データでトレーニングされた大規模な生成AIモデルで、質疑応答、エッセイの作成、画像のキャプション付けなど、さまざまな一般的なタスクを実行できるもの」と説明しています。つまり基盤モデルは、ひとつの用途に特化して作られたAIではなく、幅広いタスクに応用できる「土台」として設計されている点が特徴です。ビジネスで生成AIを検討する際に「LLM」「基盤モデル」という言葉を目にすることが多いのは、この汎用性の高さが実務での応用範囲を広げているためといえます。

GAN・VAE・拡散モデル・Transformerはそれぞれ得意分野が異なるため、実際のサービスでは目的に応じてこれらの技術が使い分けられ、あるいは組み合わされています。次のセクションでは、こうした技術がテキスト・画像・音声・動画・コードといった具体的なモダリティで、どのように活用されているかを見ていきます。

生成的人工知能でできること|テキスト・画像・音声・動画・コード生成

生成的人工知能は、対応できるモダリティ(情報の種類)が非常に幅広いことが特徴です。ここでは、テキスト・コードから画像・音声・動画、さらには分子やロボット制御といった専門領域まで、どのような入力に対してどのような出力が得られるのかを具体的に見ていきます。

テキスト生成・コード生成

生成AIのなかでも最も普及しているのが、自然言語のテキストを生成する領域です。単語や単語トークンで訓練された生成AIシステムには、GPT-3、LaMDA、LLaMA、BLOOM、GPT-4などがあり、これらは自然言語処理や機械翻訳、自然言語生成が可能であり、他のタスクの基盤モデルとしても使われています(出典: Wikipedia「生成的人工知能」)。

具体的には、次のような入力と出力の組み合わせが可能です。

  • 「〇〇について300字で要約して」という指示文(プロンプト)に対して、要約文を生成する
  • 議事録の箇条書きメモを渡すと、報告書や案内文の体裁に整形して出力する
  • 商品説明を渡すと、複数言語への翻訳文を生成する

さらに注目したいのが、自然言語だけでなくプログラミング言語のテキストを学習させることで、新しいコンピュータプログラムのソースコードを生成できる点です。代表例としてOpenAI Codexが挙げられ、「こういう処理をするコードを書いて」という自然言語の指示から、実際に動作するコードを出力することができます(出典: 同上)。エンジニアの開発補助として、コードの下書きやデバッグ支援に活用されるケースが広がっています。

画像・音声・動画生成

テキスト以外のモダリティでも、生成AIの応用は急速に広がっています。

画像生成では、説明文付きの画像セットで訓練された生成AIシステムとして、Imagen、DALL-E、Midjourney、Stable Diffusionなどが知られています。これらは「テキストからの画像生成(text-to-image)」や、既存の画像の画風を別の画風に変換する「ニューラルスタイル変換」によく使われています(出典: 同上)。たとえば「夕焼けの海辺を水彩画風で」といった文章を入力するだけで、その情景を描いた画像を出力できます。

音楽・音声生成の分野では、MusicLMのようなシステムが、レコード音楽のオーディオ波形とテキスト注釈をともに学習することで、テキストによる記述に基づいて新しい音楽サンプルを生成することができます(出典: 同上)。「明るいテンポのアコースティックギター曲」といった指示から、実際に楽曲を作り出すイメージです。

動画生成も進展が著しい領域です。注釈付き動画で訓練された生成AIは、時間的に一貫性のある(コマ間で内容が破綻しない)ビデオクリップを生成できるようになっており、RunwayMLのGen-1やMeta PlatformsのMake-A-Videoといったシステムが例として挙げられます(出典: 同上)。静止画だけでなく動きのあるコンテンツまで自動生成できる段階に入ってきています。

このほか、専門領域への応用も進んでいます。分子・創薬分野では、アミノ酸配列やDNA・タンパク質を表す分子表現(SMILESなど)を学習させることで、AlphaFoldのようなシステムがタンパク質の構造予測や創薬に活用されています。またロボット制御の分野では、ロボットの動きを学習した生成AIがモーションプランニングのために新しい軌道を生成でき、Google ResearchのUniPiは「青いボウルを取る」といった自然言語プロンプトでロボットアームの動きを制御する例が報告されています(出典: 同上)。テキストや画像にとどまらず、物理的な動作の生成にまで応用範囲が広がっている点は、生成AIの可能性を考えるうえで押さえておきたいポイントです。

マルチモーダルAIの広がり

これまで見てきた生成AIは、それぞれ単一の情報形式を扱うものが中心でした。こうした「一種類の情報の入力にのみ対応する」形式は「ユニモーダル」と呼ばれます。これに対して、文字と画像など複数種類の情報の入力に対応する形式は「マルチモーダル」と呼ばれています(出典: IT用語辞典e-Words「生成AI」)。

マルチモーダルAIでは、たとえば画像を入力しながら「この写真に写っている問題点を文章で説明して」と指示したり、音声と文字の両方を組み合わせた指示から動画コンテンツを生成したりすることが可能になります。テキスト・画像・音声・動画といったモダリティの垣根が徐々になくなり、複数の情報を横断的に理解・生成できるAIへと進化している点は、今後の生成AIの発展を占ううえで重要な流れといえます。こうした多様な生成能力をビジネスの現場でどう活かせるかについては、次のセクションで詳しく見ていきます。

ビジネスにおける生成的人工知能の活用メリットと事例

生成的人工知能は、単なる話題性のある技術にとどまらず、実際のビジネスの現場で成果を生み出す存在になりつつあります。実際、生成AIへの投資は2020年代初頭に急増しており、Microsoft、Google、Baiduといった大企業だけでなく、多数の中小企業も独自の生成AIモデル開発に乗り出しています(出典: Wikipedia「生成的人工知能」)。ここでは、企業が生成AIを導入することでどのようなメリットが得られるのか、そして業界ごとにどのような活用イメージが描けるのかを整理します。

生成AI導入の主なメリット

生成AIを業務に取り入れることで得られる代表的なメリットは、次のように整理できます。

  • 業務効率化・生産性の向上:文章作成、要約、情報整理といった定型的な作業を生成AIに任せることで、担当者はより付加価値の高い業務に時間を割けるようになります。
  • 意思決定の迅速化:大量のデータや文書をもとに、要点をまとめたり選択肢を提示したりすることで、判断材料を素早く揃えられます。
  • パーソナライゼーションの高度化:顧客一人ひとりの属性や行動履歴に応じた提案文・レコメンドを、人手をかけずに生成できます。
  • 新規アイデア創出の支援:企画のたたき台やキャッチコピー、デザイン案などを短時間で複数パターン出力できるため、発想の幅を広げやすくなります。

生成的人工知能は、Wikipediaの解説にもあるとおり、アート、執筆、ソフトウェア開発、ヘルスケア、金融、ゲーム、マーケティング、ファッションなど、幅広い業界で応用できる可能性を持つ技術です(出典: Wikipedia「生成的人工知能」)。これは裏を返せば、業種や職種を問わず、社内のどこかしらの業務プロセスに生成AIを組み込める余地があるということでもあります。ただし、導入効果を最大化するには、「どの業務に、どの粒度で使うか」を見極めることが重要であり、闇雲にツールを導入するのではなく、業務フローの中でボトルネックになっている工程から着手するのが現実的な進め方といえます。

業界別の活用イメージ(金融・製造・カスタマーサポートなど)

生成AIの活用イメージは業界によって特色があります。ここでは代表的な例を紹介します。

金融サービス

金融分野は、生成AIの活用が具体的に語られることの多い業界のひとつです。AWSの解説によると、金融機関はチャットボットを使って商品のレコメンデーションを生成し、顧客からの問い合わせに対応することでカスタマーサービス全体を改善しています。さらに、次のような活用も進んでいます。

  • 融資機関が発展途上国において融資の承認スピードを高める
  • 銀行が請求・クレジットカード・ローンにおける不正行為を迅速に検出する
  • 投資会社が安全でパーソナライズされた財務アドバイスを低コストでクライアントに提供する

これらはいずれも、「人手では時間がかかっていた判断や対応を、生成AIが補助することでスピードアップする」という共通の構図を持っています。

製造業

製造業においては、設計案の生成や仕様書・マニュアルの自動作成、不具合報告の要約といった用途での活用が期待されています。また、生成AIの応用範囲は工業製品そのものの設計支援にとどまらず、分子・タンパク質構造の予測分野にも広がっており、創薬領域ではAlphaFoldのようなシステムがタンパク質の構造予測に利用されています(出典: Wikipedia「生成的人工知能」)。研究開発の現場では、こうした専門領域に特化した生成AIの活用が、開発リードタイムの短縮につながる可能性があります。

カスタマーサポート

カスタマーサポートは、生成AIによるチャットボット活用がもっともイメージしやすい領域です。よくある質問への一次対応や、問い合わせ内容の要約・分類を生成AIに任せることで、オペレーターはより複雑な案件に集中できるようになります。金融分野の事例と同様に、顧客対応の質とスピードを両立させる手段として、多くの業界で応用が進んでいる分野です。

マーケティング・クリエイティブ領域

コピーライティング、広告バナーの叩き台作成、SNS投稿文の生成など、マーケティング領域も生成AIとの親和性が高い分野です。テキストや画像を短時間で複数パターン生成できる特性は、A/Bテストの母数を増やしたり、企画の初期段階での検討スピードを上げたりする用途に適しています。

このように、生成AIの活用イメージは業界ごとに異なりますが、根底にあるのは「人が時間をかけていた作業を代替・補助し、意思決定やクリエイティブな判断により多くのリソースを割けるようにする」という発想です。次のセクションでは、こうしたメリットの裏側にあるリスクや注意点、そして著作権・法規制をめぐる動向について整理します。

生成的人工知能の課題・リスクと著作権・法規制の動向

生成的人工知能は業務効率化やビジネス創出に大きな可能性をもたらす一方で、導入・活用にあたって見過ごせない課題やリスクも抱えています。ここでは技術的な課題、著作権・肖像権をめぐる論点、そして雇用や法規制の動向を整理し、企業が押さえておくべき視点を確認します。

ハルシネーション・バイアスなど技術的な課題

生成AIは訓練データの規則性や構造を学習し、そこから新しいデータを生成する仕組みを持っています(Wikipedia「生成的人工知能」)。この仕組み自体が、事実に基づかない情報をもっともらしく出力してしまう「ハルシネーション(幻覚)」のリスクを内包しています。生成AIが出力する文章はあくまで統計的に「それらしい」内容を組み立てたものであり、必ずしも事実を検証したうえでの回答ではありません。業務利用の際は、生成結果を鵜呑みにせず、人間による事実確認(ファクトチェック)の工程を組み込むことが欠かせません。

また、訓練データに含まれる偏り(バイアス)がそのまま出力結果に反映されてしまう懸念も指摘されています。学習元のデータに特定の属性や価値観への偏りがあれば、生成AIの回答にも無意識のうちにその偏りが表れる可能性があります。採用選考や顧客対応など、公平性が強く求められる業務に生成AIを組み込む場合は、こうしたバイアスのリスクを踏まえた運用ルールが必要です。

さらに、社内の機密情報や個人情報をプロンプトとして入力してしまうことによる情報漏洩リスクも、企業が実務で直面しやすい課題です。生成AIの悪用可能性として、フェイクニュースやディープフェイクの作成に利用されることへの懸念も広がっており、こうした技術的な課題への対応として、欧州連合の人工知能法をはじめとする法規制の議論が進められています(Wikipedia「生成的人工知能」)。

著作権・肖像権をめぐる論点

生成AIの活用を検討するうえで、多くの企業がもっとも気にかけるのが著作権に関する論点です。IT用語辞典e-Wordsの解説によると、現在の著作権関連法規には機械学習システムに学習データとして著作物を入力すること自体についての明確な規定は存在しません。しかし、生成AIが出力する文章や画像には、学習した著作物の特徴が反映されていることがあり、著作者の許諾や補償を得ずに利用することは「タダ乗り」にあたるとして、何らかの規制を求める声が上がっていると指摘されています(IT用語辞典e-Words「生成AI」)。

これに加えて、次のような論点も未整理のまま残されています。

  • 生成AIの出力結果そのものに著作権を認めるべきか、認める場合は誰が著作者となるのか
  • 画像や映像の出力結果に著名人にそっくりな人物が含まれる場合、肖像権とどう向き合うべきか
  • 生成物を公開する際に、AIによる生成物であることを明示する義務を課すべきか

(以上、IT用語辞典e-Words「生成AI」

肖像権や声の権利に関する懸念は、実際の社会問題としても表面化しています。2023年4月には、ドイツのタブロイド紙Die Aktuelleが、スキー事故以来公の場に姿を見せていなかった元レーシングドライバーのミハエル・シューマッハとの偽インタビューを生成AIで作成して掲載し、大きな論争を招いた末に編集長が解雇される事態となりました(Wikipedia「生成的人工知能」)。

日本国内でも、こうした無断生成への懸念は声を上げる動きにつながっています。2024年には日本の有名声優26名が、本人の許諾なく学習・生成されるAI音声や映像に反対する有志の会「NOMORE 無断生成AI」を結成し、啓発動画を公開しました。声明文では「やった覚えのない朗読や歌、そして声そのものが、ネット上に公開され、時に販売」される現状への強い懸念が表明されています(Wikipedia「生成的人工知能」)。自社のコンテンツ制作やマーケティングに生成AIを活用する際は、こうした権利関係の議論が発展途上であることを前提に、社内ガイドラインで慎重な運用基準を設けておく姿勢が求められます。

雇用への影響と各国の法規制の動き

生成AIの普及は、クリエイティブ職を中心に雇用への影響も現実のものとしています。2023年4月の時点で、画像生成AIの普及により中国のイラストレーターの仕事の70%が失われていると報告されました。また同年7月には、生成AIの開発がハリウッド労働争議の一因となり、映画俳優組合の会長フラン・ドレッシャーが「人工知能はクリエイティブな職業に存続の脅威をもたらす」と宣言する事態にも発展しています(Wikipedia「生成的人工知能」)。

こうした社会的な影響の広がりを受け、国際社会では生成AIのリスクに対応するための法規制の枠組みづくりが進められています。2023年5月に開催されたG7広島サミットでは「広島AIプロセス」が採択され、安全・安心・信頼できるAIの実現に向けて、AIのライフサイクル全体に関わる開発者・提供者・利用者それぞれが果たすべき責任やリスク低減の方針を整理した「全てのAI関係者向けの広島プロセス国際指針」がまとめられました(Wikipedia「生成的人工知能」)。

こうした国際的な議論の高まりを踏まえると、企業に求められるのは「規制の詳細を待ってから動く」姿勢ではなく、今の時点でできる備えを進めておくことです。具体的には、次のような取り組みが現実的な出発点になります。

  • 生成AIの業務利用範囲と禁止事項を定めた社内ガイドラインの整備
  • 機密情報・個人情報をプロンプトに入力しないための運用ルールの周知
  • 著作権・肖像権リスクを踏まえた、生成物の利用可否をチェックする体制づくり
  • 生成AIが出力した情報を人が検証する「人間によるレビュー」の工程の組み込み

生成AIは強力な武器である一方、そのリスクを正しく理解しないまま活用を進めることは、企業にとって新たな法務・信用リスクを抱え込むことにもつながります。技術の恩恵とリスクの両面を踏まえたうえで、自社に合った活用の一歩を踏み出すことが重要です。

まとめ

生成的人工知能は、従来型AIの「正解を当てる」役割とは異なり、GAN・VAE・拡散モデル・Transformerといった技術を土台に、文章や画像、音声、動画といった新しいコンテンツを作り出す技術です。2014年のVAE・GAN登場から2017年のTransformer、そして2022年のChatGPT商用普及まで、わずか10年ほどで研究段階から日常的なビジネスツールへと発展してきました。金融や製造業、カスタマーサポートなど幅広い業界で業務効率化の実例が生まれている一方、ハルシネーションやバイアス、著作権・肖像権をめぐる未整理の論点、雇用への影響といったリスクも抱えています。自社で活用を進める際は、社内ガイドラインの整備や機密情報の取り扱いルール、人によるレビュー体制づくりから着手することが、次の一歩として現実的な選択肢になります。

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