// ARTICLE
AI OCRとは?従来OCRとの違い・精度・導入事例を解説
// この記事を書いた人
株式会社Global Design Factory 代表取締役
高橋 遼
北海道大学工学部でAIによる自然言語処理を研究。P&Gにてビッグデータ解析・消費者分析を担当した後、伊良コーラのマーケティング責任者を経て、現在は株式会社Global Design Factory代表取締役として、中小企業を中心にAIを活用した業務効率化・自動化を支援。

紙の帳票の手入力業務に時間を取られ、「AI OCR」という言葉は知っていても、従来のOCRと何が違うのか、自社で本当に効果が出るのかがはっきりしないという方は多いのではないでしょうか。本記事では、AI OCRの仕組みや従来OCRとの違いから、定型・準定型・非定型帳票への対応、導入によるメリット、精度が100%ではないといった注意点、さらに群馬県や岩手県久慈市などの具体的な導入事例までを整理して解説します。読み終える頃には、自社の帳票業務にAI OCRが適用できるかを判断し、比較検討の次の一歩を踏み出せる状態になります。
AI OCRとは?従来のOCRとの違いをわかりやすく解説
紙の帳票や画像・PDFに書かれた文字をデジタルデータに変換する技術として、「OCR」という言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。近年はそこに「AI」という言葉が加わった「AI OCR」が注目を集めていますが、両者は何が違うのでしょうか。まずは基本的な定義と、精度・機能面での違いを整理していきます。
AI OCRの基本的な定義
AI OCRとは、紙や画像・PDFに書かれた文字を、AIの深層学習(ディープラーニング)技術を活用して読み取る仕組みのことです。
従来のOCRも「光学的文字認識」として文字をデータ化する技術自体は同じですが、AI OCRはそこにAIによる学習能力を組み合わせている点が大きな特徴です。あらかじめ大量の文字データを学習させることで、活字はもちろん、崩れた手書き文字のような読み取りが難しいケースにも対応できるようになっています。
- 紙の帳票をスキャンして文字データに変換する
- 画像やPDFファイルから文字情報を抽出する
- 抽出したデータをシステムへの入力やRPAでの後続処理に活用する
こうした一連の流れ自体は従来型のOCRと共通していますが、「どれだけ正確に読み取れるか」という精度の面で、AI OCRは従来のOCRを大きく上回ります。この精度の違いこそが、AI OCRが手入力業務の削減ツールとして企業や自治体で導入が進んでいる理由といえます。
なお、AI OCRが読み取れる帳票の種類(定型・準定型・非定型)や、なぜ高精度を実現できるのかという技術的な仕組みについては、後の章で詳しく解説します。ここではまず、「AI OCR=AIの学習能力を組み合わせた高精度なOCR」という前提を押さえておいてください。
従来のOCRとの精度・機能の違い
AI OCRと従来のOCRの最も大きな違いは、文字認識の精度です。OPTiMの解説記事によると、文字認識の精度はAI OCRが90%以上であるのに対し、AI非搭載の従来OCRは10%〜70%程度にとどまるとされています。また、AISpectの解説記事でも、従来OCRで活字を読み取った場合は良くて6〜8割程度の読み取り精度にとどまっていたのに対し、AI技術を用いたAI OCRでは9割以上の識字率が一般的になっているとされており、両者はおおむね同じ傾向を示しています。
この精度差が生まれる背景には、文字を認識する「仕組み」そのものの違いがあります。
- 従来のOCR:1文字単位で文字の形状パターンを照合して認識する方式です。あらかじめ登録された字形と近いかどうかで判定するため、文字が罫線と重なっていたり、崩れた手書き文字だったりすると、正しく認識できないケースが多くなります。
- AI OCR:1文字単位の照合だけでなく、前後の文脈も参考にしながら認識する方式です。そのため、多少乱れた手書き文字や、罫線と被って一部が欠けたように見える文字であっても、周囲の文脈から「この文字である可能性が高い」と判断し、正しく読み取れる場合があります。
つまり、従来のOCRが「見た目の形」だけで判断する仕組みであるのに対し、AI OCRは「見た目の形」に加えて「文脈」まで加味して判断する点が、精度の違いを生む本質的な理由です。この文脈理解の仕組みがどのように動いているのかについては、次の章で詳しく掘り下げていきます。
この精度・機能の違いを踏まえると、次のような業務課題を抱えている場合は、AI OCRの導入が有効な選択肢になり得ます。
- 手書きの申込書やアンケートが多く、従来型OCRでは誤読が多発している
- 罫線や枠線と文字が重なった帳票が多く、正確な読み取りができていない
- 大量の帳票データ入力を、人手による目視・手入力で処理している
一方で、「AI OCRを導入すれば精度は100%になる」というわけではなく、運用面で押さえておくべき注意点も存在します。この点については、メリットと併せて後の章で具体的に解説します。まずは「AI OCRは従来のOCRよりも高精度で、文脈理解によって手書き文字にも強い」という違いを、記事全体を読み進める上での前提として押さえておいてください。
AI OCRが高精度に文字を読み取れる仕組み
AI OCRがなぜ高い認識精度を実現できるのか、その理由を理解するには、内部でどのような処理が行われているかを知ることが近道です。ここでは、AI OCRの中核技術であるディープラーニングによる文字認識のプロセスと、従来のOCRにはなかった「文脈を理解する」という仕組みについて解説します。
ディープラーニングによる文字認識のプロセス
AI OCRは、紙や画像・PDFに書かれた文字を、AIの深層学習(ディープラーニング)技術によって読み取っています。ディープラーニングとは、人間の脳の神経回路を模したモデルに大量のデータを学習させることで、パターンや特徴を自動的に見つけ出す技術です。
文字認識においては、あらかじめ大量の文字画像データをAIに学習させることで、次のようなプロセスが実現されています。
- 手書き文字や印刷文字の形状の特徴を、AIが自動的に抽出する
- かすれた文字、傾いた文字、崩れた手書き文字など、多様な書き方のパターンをあらかじめ学習しておく
- 学習済みのモデルをもとに、未知の文書に書かれた文字であっても、近い特徴を持つ文字として推定・認識する
従来のOCRは、あらかじめ登録された文字の形状パターンと1文字ずつ照合する仕組みが中心でした。そのため、登録パターンから少しでも外れた文字(乱筆の手書き文字など)は認識できず、読み取りエラーが多発していました。一方でAI OCRは、大量の学習データによって「文字の揺れ」そのものを学習しているため、多少崩れた文字や個人差のある筆跡であっても、高い確率で正しく認識できるようになっています。
文脈を理解して読み取る仕組み
AI OCRの精度を語るうえでもう一つ欠かせないのが、「文脈を参考にして認識する」という仕組みです。
従来のOCRは、文書に書かれた文字を1文字単位で切り出し、個別に認識していく方式が基本でした。この方式では、1文字ずつの見た目の一致度だけが判断材料になるため、罫線と文字が重なっている箇所や、隣接する文字とつながって見える手書き文字などは、正しく切り分けること自体が難しく、誤読につながりやすい構造になっていました。
これに対してAI OCRは、1文字単体の形状だけでなく、その前後にどのような文字や単語が並んでいるかという文脈情報も合わせて考慮しながら認識を行います。たとえば、ある1文字の形状だけでは判断がつきにくい場合でも、
- 前後に並ぶ文字列全体としての自然さ
- 単語や数字列としてよく使われるパターンとの整合性
といった情報を手がかりにすることで、「この位置に来るのはこの文字である可能性が高い」という推定を行うことができます。この文脈理解の仕組みがあるからこそ、AI OCRは乱筆の手書き文字や、罫線と文字が重なって見えにくい部分についても、従来のOCRより高い精度で読み取ることが可能になっています。
つまりAI OCRの高精度は、単に「文字の形をたくさん覚えている」だけでなく、「文字が置かれている前後関係まで踏まえて総合的に判断する」という、人間の読み取り方に近いプロセスを取り入れていることによって実現されているといえます。
AI OCRの3つの分類(定型・準定型・非定型帳票)
AI OCRを導入する際にまず押さえておきたいのが、「読み取る帳票の型」という考え方です。AI OCRは万能に何でも読み取れるわけではなく、対象とする帳票のフォーマットの決まり方によって、得意なタイプが分かれています。一般的にAI OCRが対応する帳票は、「定型帳票」「準定型帳票」「非定型帳票」の3つに分類されます。
自社で読み取りたい書類がどのタイプに当てはまるかを事前に整理しておくと、後述する製品選定(比較ポイント)の段階でも判断がスムーズになります。ここでは、それぞれのタイプの特徴を具体例とともに見ていきましょう。
定型帳票に対応するタイプ
定型帳票とは、フォーマットがあらかじめ決められている帳票のことです。代表的な例としては、次のようなものが挙げられます。
- 運転免許証
- 各種申込書
- 決められたフォーマットの申請用紙
これらの帳票は、項目の位置やレイアウトがどの書類でも共通しているため、「どの位置に何の情報が書かれているか」をあらかじめAI OCRに定義しておくことで、高い精度での読み取りが可能になります。フォーマットの揺れが少ない分、AI OCR導入の中でも比較的シンプルに運用を始めやすいタイプといえます。
はじめてAI OCRを導入する企業や自治体にとっては、まず定型帳票の業務から着手し、効果を実感してから対象を広げていくというステップも現実的な進め方です。
準定型帳票に対応するタイプ
準定型帳票とは、フォーマット自体は取引先や発行元ごとにバラバラですが、記載される項目には一定の決まりがある帳票を指します。具体的には、次のような書類が該当します。
- 請求書
- 住民票
- 預金通帳
例えば請求書であれば、発行する会社によってレイアウトや様式は異なりますが、「発行日」「金額」「取引先名」といった記載項目そのものは共通しています。準定型帳票に対応するAI OCRは、こうした項目の意味をAIが理解し、フォーマットの違いを吸収しながら必要な情報を抽出する仕組みを持っています。
経理部門で日々発生する請求書処理や、住民票・通帳といった行政・金融関連の書類を扱う業務では、この準定型帳票への対応力が導入効果を左右するポイントになります。フォーマットが統一されていない書類を大量に扱っている場合は、準定型帳票への対応精度を重点的に確認しておく価値があります。
非定型帳票に対応するタイプ
非定型帳票は、帳票によって形式がまったく異なり、共通のフォーマットが存在しない書類のことです。代表的な例としては、次のようなものがあります。
- 契約書
- 入札公告
契約書は取引先や契約内容によって条項の構成や文言、レイアウトが大きく異なりますし、入札公告も発注元によって書式がさまざまです。このような非定型帳票を高い精度で読み取るには、より高度な文脈理解の技術が求められます。
なお、AI OCRは図面や利用申込書、注文書、住民票、入学願書、アンケートなど、非常に幅広い帳票に対して汎用的に活用されています。自社が扱う書類が定型・準定型・非定型のどこに当てはまるか、あるいは複数のタイプが混在しているかを整理しておくことが、次章以降で解説するメリットや注意点を正しく理解するための土台になります。
AI OCR導入で得られる4つのメリット
AI OCRを業務に取り入れることで、単に「文字を読み取る」だけにとどまらない、幅広いメリットが得られます。ここでは、バックオフィス業務を中心に、AI OCRがもたらす代表的な4つのメリットを、仕組みや活用シーンの観点から整理していきます。なお、具体的な数値実績については後述の事例パートで詳しく紹介しますので、ここでは「どのような効果が期待できるのか」というイメージをつかんでいただければと思います。
データ入力業務の自動化による時間削減
これまで紙の帳票をシステムに入力する作業は、担当者が目視で内容を確認しながら手作業でキーボードを打つのが一般的でした。この方法は時間がかかるだけでなく、入力ミスや確認漏れといったヒューマンエラーのリスクも避けられません。
AI OCRを導入すると、紙やPDF、画像として保存された帳票をスキャンするだけで、文字情報を自動的にデータ化できます。これにより、これまで人手に頼っていた入力作業の多くを自動化し、担当者はデータの最終確認や、より付加価値の高い業務に時間を使えるようになります。
特に、請求書や申込書、アンケート用紙など、毎日大量の紙帳票を処理している部署にとっては、入力業務そのものの負担が大きく軽減される点が魅力です。単純作業から解放されることで、残業時間の削減や、繁忙期における人員確保の課題緩和にもつながっていきます。
RPAとの連携でバックオフィス業務を効率化
AI OCRの真価は、単体で使うよりも、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と組み合わせることでより発揮されます。AI OCRで読み取ったデータをRPAに引き渡すことで、データ化した後の業務プロセスまで一気通貫で自動化できるのです。
具体的には、以下のような業務フローの自動化が可能になります。
- FAXで届いた注文書をAI OCRで読み取り、そのまま受注システムへ入力する
- 請求書に記載された金額をAI OCRで抽出し、会計システム上の金額データと自動で突き合わせる
- 図面に記載されたBOM(部品表)情報をAI OCRで読み取り、生産管理システムへ自動で転記する
このように、AI OCRとRPAを連携させることで、「読み取り」から「システムへの反映」までの一連の作業を人の手を介さずに完結させられます。バックオフィス業務は複数のシステムをまたいだ転記作業が多く発生しがちですが、この連携によって業務全体のリードタイムを短縮し、部署全体の生産性を底上げすることが期待できます。
手書き・非定型帳票にも対応できる柔軟性
AI OCRのもう一つの強みは、対応できる帳票の幅広さです。前述のとおり、AI OCRは図面、利用申込書、注文書、住民票、入学願書、アンケートなど、実にさまざまな種類の帳票に対して汎用的に活用されています。
従来型のOCRは、あらかじめ決まったフォーマットの帳票でなければ精度が出にくいという弱点がありましたが、AI OCRはディープラーニングによって文字の文脈を踏まえて認識するため、手書きの癖字や、フォーマットが統一されていない帳票に対しても柔軟に対応できます。
この柔軟性により、これまで「フォーマットがバラバラだから」「手書きだから」という理由でOCR化を諦めていた業務にも、AI OCRの活用範囲を広げられる可能性があります。定型・準定型・非定型といった帳票の種類を問わず幅広く使えることは、部署や業務ごとに個別のシステムを用意する必要がなく、全社的なデータ化の基盤として導入しやすい点にもつながります。
ペーパーレス化・テレワーク環境の整備
AI OCRの導入は、単なる業務効率化だけでなく、働き方そのものを見直すきっかけにもなります。紙帳票をAI OCRでデータ化することで、これまで紙のまま保管・回覧していた情報を電子データとして扱えるようになり、社内のペーパーレス化を後押しします。
紙の書類が電子化されれば、出社しなければ確認できなかった情報にも、オフィス外からアクセスできるようになります。これは、テレワークやハイブリッドワークといった多様な働き方を支える基盤づくりにも直結する変化です。「紙の処理のためだけに出社する」といった状況を減らせる点は、担当者にとっても大きなメリットといえるでしょう。
また、電子化されたデータは検索性にも優れているため、必要な情報をすぐに探し出せるようになり、業務の属人化解消や引き継ぎのしやすさにも良い影響を与えます。
AI OCR導入前に知っておきたい注意点・デメリット
AI OCRは従来のOCRと比べて高い認識精度を実現できる技術ですが、決して万能ではありません。導入後に「思っていたのと違う」というギャップを生まないためにも、事前にデメリットや注意点を正しく理解しておくことが重要です。
認識精度は100%ではなく目視確認が必要
AI OCRの認識精度は90%以上とされており、従来型OCRの10%〜70%程度と比べると非常に高い水準です(OPTiM「【2026年版】AI-OCRとは?」)。しかし、この数字はあくまで「9割以上は正しく読み取れる」という意味であり、100%を保証するものではありません。
- 手書き文字の乱れが激しい場合
- 印字がかすれていたり、紙自体が汚れていたりする場合
- 罫線と文字が重なり合っている場合
こうしたケースでは、AI OCRであっても誤読が発生する可能性があります。そのため、読み取り結果をそのままシステムに流し込むのではなく、人の目でチェックする工程を業務フローに組み込んでおくことが欠かせません。「AI OCRを導入すれば人手による確認作業がゼロになる」と考えてしまうと、運用開始後にギャップを感じやすいポイントです。あくまで「入力の手間を大幅に減らす仕組み」であり、「入力業務を完全に自動化する仕組み」ではないと捉えておくと、期待値のズレを防ぎやすくなります。
AI特有の「誤読のクセ」がある
AI OCRには、ディープラーニングによる学習の結果として、特有の「誤読のクセ」が生じることがあります。たとえば「0C1(ゼロ・シー・イチ)」という文字列を「001」と誤って認識してしまうAIがあったとします。このAIは同じパターンで繰り返し「0C1」を「001」と誤読する一方で、まったく別の文字列である「00I」を「001」と誤読することはほとんどありません(AISpect「AI OCRとは?仕組み・できること・失敗しない選び方」)。
つまり、AI OCRの誤読は「ランダムに間違える」のではなく、「特定のパターンで毎回同じように間違える」という性質を持っています。この特性を理解しておくと、次のような対策が取りやすくなります。
- 自己学習機能を持つ製品であれば、誤読のパターンを都度修正・学習させることで精度を継続的に改善できます。
- SaaS型など自己学習ができないタイプの製品であれば、RPAと組み合わせて、誤読しやすい文字列を自動で補正するルールをあらかじめ設定しておく方法があります。
「誤読するかどうか」だけでなく「どのように誤読するクセがあるか」を把握し、運用でカバーする視点を持つことが、AI OCRを実務で使いこなすうえでのポイントといえます。
導入・運用にコストと手間がかかる
AI OCRは便利なツールですが、導入すればすぐに効果が出るわけではありません。実際の運用に乗せるまでには、一定のコストと手間がかかることも理解しておく必要があります。
- 初期設定の手間:定型帳票であっても、読み取り項目の設定や既存システムとの連携設定には一定の作業が発生します。
- 運用ルールの整備:目視確認の担当者や確認フローを決めておかないと、誤読を見逃したままデータが後続業務に流れてしまうリスクがあります。
- ランニングコスト:ツールの利用料に加えて、社内での運用体制を維持するための人的コストも継続的に発生します。
こうしたコストや手間は、削減できる業務時間と比較して初めて投資対効果が見えてきます。導入前に「どの業務にどれだけの時間がかかっているか」を洗い出し、削減効果を試算しておくと、投資判断がしやすくなります。
セキュリティポリシーの確認が必要
AI OCRは、請求書や契約書、住民票といった機密性の高い情報を扱う場面で利用されることが多いツールです。そのため、導入にあたっては自社のセキュリティポリシーに適合しているかどうかを事前に確認しておく必要があります。
特にクラウド型(SaaS型)のAI OCRを利用する場合は、以下のような点をチェックしておくと安心です。
- 読み取ったデータがどこに保存され、どのように管理されるか
- データの暗号化やアクセス制御の仕組みが整っているか
- 個人情報や機密情報を扱う業務に利用しても問題ないか、社内規定と照らし合わせて確認できているか
自治体や金融関連の帳票を扱う場合など、扱う情報の機密性が高いほど、セキュリティ面の確認は入念に行う必要があります。導入後にセキュリティ上の懸念が発覚し、運用を見直すことにならないよう、選定段階でベンダーに確認しておくことをおすすめします。
事例で見るAI OCR導入による業務効率化の効果
AI OCRのメリットを説明されても、実際にどれくらいの効果が出るのかイメージしにくいという方も多いのではないでしょうか。ここでは、自治体と企業における具体的な導入事例を、数値とあわせてご紹介します。いずれも公開されている実際の効果測定結果をもとにしていますので、自社での導入効果を検討する際の参考にしてみてください。
群馬県:アンケート入力時間が75%削減された事例
群馬県では、DX戦略課が主導して県民アンケートの入力業務にAI OCRサービスを導入しました。
導入前の状況は、次のようなものでした。
- 対象:1,003名分のアンケート回答
- 体制:職員4人がかりで手入力
紙のアンケートを1件ずつ目で確認しながら入力する作業は、人数を投入しても時間がかかるうえ、担当職員の負担も小さくありませんでした。
AI OCRを導入した後は、対象となるアンケートの規模がむしろ約2,200名分へと拡大したにもかかわらず、データ化にかかる作業時間は導入前の4分の1にまで短縮されました。削減率にすると約75%です。この効率化によって、約150時間の作業時間が新たに創出されたと報告されています(OPTiM「【2026年版】AI-OCRとは?」内で紹介されたSmartRead事例より)。
この事例が示しているのは、単に「入力が速くなった」という話にとどまりません。処理対象のアンケート件数が2倍以上に増えているにもかかわらず、トータルの作業時間は大幅に減っているという点です。業務量が増えても、AI OCRによってデータ化のボトルネックを解消できれば、人員を増やさずに対応範囲を広げられる可能性があることを表しています。
岩手県久慈市:AI OCRとRPAで入力作業時間を約8割削減した事例
岩手県久慈市では、職員数の減少という自治体特有の課題を背景に、AI OCRとRPAを組み合わせた業務効率化に取り組みました。
対象となったのは、次の2つの業務です。
- ふるさと納税の処理業務:作業時間が19.8時間から4.2時間へ短縮(約78%削減)
- アンケート集計業務:作業時間が72.1時間から12.2時間へ短縮(約83%削減)
いずれの業務も、削減率はおよそ8割前後という結果になっています(参照元:NTT東日本 導入事例)。
この事例のポイントは、AI OCR単体ではなく、RPAとセットで導入している点です。AI OCRが紙の書類から文字データを読み取り、そのデータをRPAが後続の業務システムへ自動的に転記・登録するという流れを構築することで、「読み取り」から「入力・登録」までの一連の作業を人の手を介さずに完結させています。職員数が限られる自治体において、こうした仕組みは単なる時短にとどまらず、限られた人員でより多くの業務をこなすための現実的な解決策になっていると言えるでしょう。
契約書管理システム導入で年間250時間の工数削減を実現した事例
自治体の事例に続いて、民間企業での活用例もご紹介します。
飲食事業を展開する株式会社アースフードは、AI OCRを搭載した契約書管理システム「OPTiM Contract」を導入しました。
導入前は、必要な契約書を探し出すだけで1件あたり1時間程度の時間がかかっていたといいます。契約書が紙のまま保管されている場合、担当者名や取引先名、契約日などを手がかりに書庫やファイルをひとつずつ探す作業が発生しやすく、担当者の記憶や勘に頼らざるを得ない場面も少なくありません。
導入後は、AI OCRによって契約書の内容がデータ化・インデックス化されたことで、検索にかかる時間はわずか1分程度にまで短縮されました。この効果を年間ベースで積み上げると、約250時間程度の工数削減につながったと報告されています(参照元:OPTiM Contract 導入事例)。
この事例は、AI OCRが「入力作業の削減」だけでなく、「探す・確認する」という日常的に発生しがちな業務のロスを解消する手段にもなり得ることを示しています。契約書のように件数が積み上がっていく書類ほど、データ化による検索性向上の恩恵は大きくなる傾向があると考えられます。
これら3つの事例に共通しているのは、業務内容や組織の規模が異なっても、AI OCRの導入によって数十%〜8割前後という具体的な削減効果が確認されている点です。自社の帳票業務がどのタイプに近いかを踏まえながら、次章では実際に製品を選ぶ際の比較ポイントを見ていきましょう。
自社に合うAI OCRを選ぶための比較ポイント
ここまで、AI OCRの仕組みやメリット・デメリット、具体的な導入事例を見てきました。自社の帳票業務にAI OCRが有効そうだと判断できたら、次はいよいよ製品選びの段階に入ります。しかし、AI OCRを提供するサービスは数多く存在し、機能や特徴もさまざまです。ここでは、製品選定で失敗しないために押さえておきたい4つの比較ポイントを紹介します。
読み取りたい帳票の種類・形式に対応しているか
まず確認したいのが、自社で読み取りたい帳票の種類に、そのAI OCR製品が対応しているかどうかです。
これまでの章で解説してきたとおり、帳票には大きく分けて次の3つのタイプがあります。
- 定型帳票:運転免許証や申込書など、フォーマットが決められている帳票
- 準定型帳票:請求書や住民票、預金通帳など、フォーマットはバラバラだが一定の決まりがある帳票
- 非定型帳票:契約書や入札公告など、帳票によって形式がまったく異なる帳票
製品によって得意とする帳票タイプは異なります。定型帳票の読み取りに特化した製品もあれば、非定型帳票まで幅広くカバーできる製品もあります。自社が処理したい帳票がどのタイプに当てはまるのかをあらかじめ整理したうえで、それに対応できる製品かどうかを確認することが、選定の第一歩です。
また、AI OCRは図面や利用申込書、注文書、住民票、入学願書、アンケートなど、業種や部門を問わず汎用的に活用されています。将来的に対象業務を広げる可能性がある場合は、現在の帳票だけでなく、今後扱う可能性のある帳票形式まで見据えて対応範囲を確認しておくと安心です。
既存の業務システムやRPAと連携できるか
AI OCRは、文字を読み取ってデータ化するところまでが役割です。読み取ったデータを実際の業務に活かすには、既存の業務システムやRPAとの連携が欠かせません。
たとえば、AI OCRで読み取ったデータをRPAと組み合わせることで、以下のような後続業務まで自動化できます。
- FAXで届いた注文書を読み取り、そのまま受注入力まで自動化する
- 請求書の金額を読み取り、システム上の登録値と自動で突合する
- 図面のBOM(部品構成表)情報を、生産管理システムへ自動転記する
このように、AI OCR単体の機能だけでなく、「読み取った後のデータをどう業務に流し込めるか」まで見据えて製品を選ぶことが重要です。すでにRPAを導入している場合は連携実績があるか、業務システムとのAPI連携が可能かどうかを事前に確認しておきましょう。連携の柔軟性が低い製品を選んでしまうと、せっかくデータ化しても手作業での転記が残ってしまい、期待した効率化が得られない可能性があります。
無料トライアルで読み取り精度を事前検証できるか
AI OCRの認識精度は9割以上とされていますが、実際の精度は帳票の状態や文字の癖、レイアウトによって変動します。特に、AI OCR特有の「誤読のクセ」は製品やエンジンごとに異なるため、カタログスペックだけで判断するのはおすすめできません。
そこで重要になるのが、無料トライアルによる事前検証です。実際に自社で扱っている帳票のサンプルを使って読み取りテストを行うことで、次のような点を導入前に確認できます。
- 自社の帳票フォーマットで、実際にどの程度の精度が出るか
- 手書き文字や特殊なレイアウトへの対応力
- 誤読が起きやすい箇所とその傾向
多くのAI OCRサービスでは、無料トライアルやデモ環境が用意されています。契約後に「思っていた精度が出なかった」というギャップを防ぐためにも、必ず自社の実データで検証してから本導入を判断することをおすすめします。
サポート体制は充実しているか
最後に見落とされがちですが、非常に重要なのがサポート体制です。AI OCRは導入して終わりではなく、運用しながら読み取り設定を調整したり、誤読が起きた際の対処法を検討したりと、継続的な運用サポートが必要になる場面が少なくありません。
特に、以下のようなサポート内容が用意されているかを確認しておくと安心です。
- 導入時の初期設定や読み取り項目の設定サポート
- 運用開始後に誤読やエラーが発生した際の問い合わせ対応
- 操作方法や活用方法に関するマニュアル・研修の提供
- RPAなど他システムとの連携に関する技術サポート
ITリテラシーがそれほど高くない部門で運用する場合は特に、トラブル発生時にすぐ相談できる窓口があるかどうかが、長期的な運用の安定性を左右します。料金や機能面だけでなく、導入後にどれだけ手厚くサポートしてもらえるかも、比較検討の重要な軸として押さえておきましょう。
以上4つの比較ポイントを踏まえて複数の製品を並べてみると、自社の業務にどのAI OCRが最も適しているかが見えてきます。まずは気になる製品の資料請求や無料トライアルから、比較検討を始めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
AI OCRは、ディープラーニングによる文脈理解によって、従来のOCRでは難しかった手書き文字や罫線に重なった文字も高精度に読み取れる技術です。定型・準定型・非定型という帳票の型を理解し、自社の書類がどれに当てはまるかを把握することが、導入検討の第一歩になります。群馬県や岩手県久慈市、株式会社アースフードの事例が示すとおり、入力時間や検索時間を大幅に削減できる一方で、精度は100%ではなく目視確認やコスト、セキュリティ面の検討も欠かせません。まずは帳票の種類とシステム連携の有無を整理し、無料トライアルで自社の実データを使った精度検証から始めてみてください。
// TOPICS


